いま世界で大人気の女性4人組バンド「おとぼけビ~バ~」。昨年のオアシス再結成公演で前座を務めたことでも話題になった彼女たちに、ある問題が発生しています。

 8月11日に更新したバンドの公式Xで、今年4月のライブでメンバーのギタリスト・よよよしえが客席に向かって投げたギターが観客に直撃して7針を縫う裂傷と頚椎捻挫などの怪我を負っていたとの声明文を発表し、大変な議論を呼んでいるのです。

「対応に誠意が欠ける」 SNS上で批判が相次ぐワケ

 多くの意見は、バンド側の対応を批判し疑問を投げかけるものでした。「4月に起きたことを今頃発表して謝罪するなんて、色んな意味で怖すぎる」とか、「この声明文の前日にライブ告知の投稿をしてることにもドン引き」とかのコメントに多くの共感が集まったことから、おとぼけビ~バ~に誠意が欠けているのではないかと受け止めているようです。

 一方で、少数ながら、「昔のハードコアやパンクのライブと比べたらかわいいもの」とか、「音楽が素晴らしいのは間違いない」と、擁護する人たちもいます。

 この報道の後、今回の事故とは別のライブ動画が拡散され、そこでもよよよしえが客席に向かってギターを投げる場面がとらえられていました。ギターを両手で横に振って、ギターがくるくると回転するような軌道で投げ込んでいたのです。

演奏の高揚感ではなく…拡散動画に見えた「用意周到さ」

 確かに、これではギターヘッドの動きが不規則になり大変に危険だということがわかります。問題となった一件も、同じような感じで投げ込まれたのだとすれば、報道されたような症状を負っていても不思議ではありません。

 そこで、改めて動画を見ると、ギターを投げ入れるまでの間に時間的な余裕があり、きちんとフォームを固めて方向を定めて横にテイクバックしてから客席に放り込んでいます。この用意周到ぶりからして、演奏の高ぶりではなく、ギターピックをプレゼントするのと同じようなオマケだったのではないかという推測が成り立ちます。多少の危険はあっても、この興奮を共にした一体感を記憶しておくための余興という位置づけですね。

「昔のパンクは~」という擁護論が的外れな理由

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 そう考えると、一部の擁護の声にある「昔のパンクバンドはこんなもんじゃなかった」というフォローは、今回のケースには当てはまりません。なぜなら、ギターを投げ入れる行為が、おとぼけビ~バ~のライブにあっては往年のパンクバンドならではの殺伐とした事件ではなく、むしろ現代のエンタメ的なサービスとして機能しているからです。

 当然のことながら、誰かを傷つけたいという思いでやっていたのではないでしょう。基本は、お客さんが喜ぶことをしたいと思っているはずです。
しかし、同時にそこには少しの危険な香りも漂わせたい。

 そんなサービス精神が少し過剰になった結果が、あのタメを作ったギター投げ入れになったのではないでしょうか。客席の盛り上がりを見ていると、アーティストとファンの間で、ある程度の同意が成立しているようにもうかがえます。

4kgの木片を客席へ…真の問題はどこにあったのか

 しかし、だからといってそれがおとぼけビ~バ~を全面的に擁護する理由になるわけでもありません。むしろ、そうした演者と観客との間で結ばれた暗黙の了解が、大きな怪我につながっているとも言えるのです。

 今回の一件は、エレキギターという鉄弦の先端のある4kg近い木片を投げ入れる行為をレクリエーションとして消費してしまうことへの認識を問われても仕方ない事態です。スリルとファンサービスの境目をつけなかったために、リスクに対する計算がおろそかになったからです。

 おとぼけビ~バ~の過失は、ギターを投げ入れた行為そのものよりも、しかるべき一線を引いてこなかったことにあるのだと思います。

文/石黒隆之

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。X: @TakayukiIshigu4
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