エアコンを設置するときなどに行われるコンクリートの穴あけ工事。プロの業者に施工を任せれば安心できると思いきや、都築ダイヤモンド工業の都築孝己氏によると、穴あけ工事の事故は後を絶たないという。

事前検査を行わずに施工するのはリスクが高い

自宅でも起こりうる穴あけ工事のリスク…「内部になにもないから...の画像はこちら >>
 1979年に創業した都築ダイヤモンド工業は、関西全域でコンクリートの穴あけ工事と、その前段階であるコンクリート内部の非破壊検査をワンストップで提供している。同社は建設現場や穴あけ現場における事故を未然に防ぐことを企業理念として掲げているが、そこには都築氏の実体験も強く影響していた。

「以前、母校で穴あけを行ったときに、コンクリートが適切に充填されておらず、脆い状態であったことに衝撃を受けました。自分はこんな学校に通っていたのかと思うと同時に、今後も新入生が入ってくることに強い危機感を覚えました」

 この体験から都築氏は事前検査なしでの工事の危険性を訴えているが、依頼者の中にはコスト削減や工期短縮を優先する人が後を絶たないという。

「事前の検査を行わずに施工することで、コンクリート内部の電気配管(配線)や鉄筋などを切断してしまうリスクがある。こうした事故を未然に防ぐためにも事前の検査が不可欠です」

「大丈夫」という判断が事故の原因に

 建物の図面に基づいて検査なしに施工しても大丈夫と判断するのは、「事故の元」だと警鐘を鳴らす。

「図面が実際の施工状況と異なる場合や、現場での変更が図面に反映されていないことは珍しくありません。根拠のない自信による施工は事故の直接的な原因となっているので、たとえ図面が残っていても検査は行うべきです。

 とある業者が依頼者の『大丈夫』という言葉を信じて病院の床の穴あけ工事を行ったところ、そこにないはずの電気配線を切断する事故を起こしてしまい、復旧作業で工期が伸びてしまったケースもある。検査なしでトラブルなく工事が完了したのはたまたま運がよかっただけです」

 常日頃から事前検査の重要性を訴えている都築氏自身も、過去の経験を頼りにした結果、事故に繋がってしまったことがあるそうだ。

「穴あけ工事を行った銀行の壁の一部に、コンクリートブロックが使われていました。このブロックの中に電気配線を通すのは、僕らからしたら考えられないこと。さすがに検査なしで進めても大丈夫だと考えたのですが、この判断は失敗でした。

 あるわけがないと思っていたブロックの中に電気配線が通っていたので、この経験から改めて、『大丈夫は事故の原因になる』と心に刻みましたね。
それからは大丈夫だという依頼者にも、『念のために調べてみませんか』と声をかけるようにしています」

鉄筋1本でも切断すると建物の寿命を縮めてしまう

自宅でも起こりうる穴あけ工事のリスク…「内部になにもないから大丈夫」「鉄筋を1本切断したくらいで」は命取り
穴あけ工事の様子
 都築氏は「鉄筋を1本切断したくらいで」といったコメントをSNSで見たことがあるそうだが、「たった1本の鉄筋がダメになるだけで建物の寿命を縮め、損傷を与える重大なリスクを伴います」と語り、つぎのように続けた。

「考えられるリスクは3つあります。1つ目は切断された鉄筋に水が入ることで錆びて膨張し、コンクリートが剥がれ落ちるリスク。2つ目は鉄筋が補強しているコンクリートの引張強度が弱まり、コンクリートに悪影響が出てしまうリスク。

 そして3つ目は建物全体の構造バランスが崩れてしまうリスクです。自分が暮らしている建物で考えると、鉄筋1本でも切断してしまうのがどれほど恐ろしいことなのか、理解してもらえると思います」

自宅の穴あけ工事でも事故は起こりうる

 我々の生活に身近なところではエアコンの設置工事のほかに、エコキュート導入時や和式便所から洋式便所へのリフォームに伴う排水位置の変更などでも、コンクリートの穴あけ工事が発生する。事故を防ぐためには、どのような業者に依頼するといいのか。

「業者を選ぶときは、施工やリフォーム前に外観や床下、コンクリート内部の検査をちゃんと実施し、耐震補強などを含めた建物の安全性を真剣に考えている会社を選ぶようにしましょう。検査結果に基づいて、事故を防ぐためにどのような提案をしてくれるかもチェックすべきポイントです。

 くり返しになりますが、業者に『検査は必要ない』と伝えてはいけません。とくにエアコンの設置工事やリフォームを行うときは、鉄筋や電気配線の切断事故が起こりやすい。建物の寿命を伸ばして安全を守るためにも、事前検査は省略すべきではありません」

【黒田知道】
 
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