現役の早稲田大学法学部4年生で、新興宗教全体を“推している”女性がいる。石橋陽香さん、22歳だ。
趣味は、“新興宗教グッズ”の収集。特定の宗教団体には属しておらず、今後も信仰する予定はないが、「人智を超えた存在に魅了される」と目を輝かせる。そこまで彼女がのめり込む理由について、深堀りした。
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新興宗教グッズを日夜収集

早稲田大の22歳女性が“新興宗教のグッズ収集”に目覚めたワケ「入信しようと思ったことはない」
メルカリで購入した、オウム真理教の漫画
――そもそも“新興宗教グッズ”というのは何でしょうか。

石橋:新興宗教が出しているグッズです。機関誌だったり、健康器具だったり……。有名なものだと、オウム真理教が初期に出していた漫画があるんです。メルカリで8000円くらいで買いました。私はマイナーな新興宗教にも心を惹かれるので、現在は活動していない教団が出していた機関誌も購入しました。2万円弱でしたね。

――確認ですが、どこの宗教も信仰していない?

石橋:はい、信仰していません。新興宗教の施設を訪れて、お話を伺ったりはしますが、一度も入会したことはありませんね。厚別(北海道)にある団体にアポなしで訪れたりして、先方はやや困惑していましたが、丁寧に対応していただきました。
崇教真光の高山市(岐阜県)にある世界総本山にもお邪魔しました。やはりとても紳士的に対応していただきました。

何に魅力を感じているのか

――新興宗教の魅力というのはどういうところにあるんでしょうか。

石橋:生きていると理不尽なことやままならないことがたくさんあると思いますが、新興宗教というのは、人間の力の及ばない聖なる領域に本気で挑んでいると思うんです。世俗化した現代社会のなかで、聖なるものが新しく生まれるという、再聖化を間近で感じられるので、新興宗教が好きなんだと思います。

――いつ頃から宗教の魅力に気づいたのでしょう。

石橋:わかりやすく傾倒したのは大学入学からです。ただ、人の力を大きく超えたものへの憧憬は中高時代からずっとあったのだと思います。

――どこかに入信しようと思ったことは?

石橋:ないです。人間があまり好きではなくて……。宗教の経典や教義は好きなのですが、人間関係に溶け込めるとは到底思えないんです。教団のなかにも、濃い人間同士のやり取りがあるはずで、想像するだけで煩わしくなってしまって。ただ、これでもだいぶ人付き合いにおいて改善されたほうなんです。


グッズ収集にくわえて、美容整形も

早稲田大の22歳女性が“新興宗教のグッズ収集”に目覚めたワケ「入信しようと思ったことはない」
収集した資料が綴じられたファイル
――改善されるきっかけはあったのでしょうか。

石橋:美容整形でしょうか。中高時代から自分の顔が醜く思えて仕方がなくて……。大学入学とほぼ同時に美容整形をしました。部位としては鼻、目(二重手術、目頭、目尻)、それから、ヒアルロン酸注射やボトックス注射もやりました。最近は、脚の脂肪吸引もしましたね。

――新興宗教のグッズ収集、教団訪問にくわえて、美容整形ともなると、相当な金額がかかりそうです。よほど稼ぐのですか。

石橋:グッズ収集にかけた金額は数十万円くらいだと思います。教団訪問も、旅費として同じくらいかかっているかもしれません。美容整形は100万円ほどで、脂肪吸引は70万円でしたね。

喫茶店でアルバイトをしています。収入は月10万強です。
実家暮らしだから成立している自覚はあります。

思えば、大学生活では薬局などの一般的な職業しか経験してこなかったかもしれません。いわゆる高給アルバイトである夜職などの経験はありません。そもそもこの顔でそんなきらびやかな場所で働いていいとは思えなくて……。あと人間関係もやはりうまくこなせないと思いますし。

集団行動に対する違和感が

――ところで石橋さんは、昔から勉強ができたのでしょうか。

石橋:できなくはなかったと思います。それ以上に運動がしたくなくて……幼稚園くらいのときから、「みんなで一緒に運動をしよう!」というのが苦痛でした。わざわざ汗をかかないといけないし、「私がやるべきことなのだろうか」とずっと思ってて(笑)。

――どんな幼稚園生ですか(笑)。中学受験をして私立の中高一貫校で過ごされ、現役で早稲田大学法学部に合格したそうですね。

石橋:学習環境については、母のおかげだと思います。父は大学こそ早稲田大学を卒業している人ですが、非常に癖が強くて……。
レールを敷いてくれたのは母なので、感謝ですね。

突如家庭に現れた、謎の女性

――お父様の“クセ強”なエピソードがあれば。

石橋:父は、私が小4くらいのときに糖尿病によって失明をしました。すると、父と懇意にしている女性が頻繁に家に現れるようになったんです。

――ちょっと待ってください。お父様、お母様、石橋さんの3人家族ではありませんでしたっけ。

石橋:ええ、そうです。その小学校くらいのときから、父、母、私、女性で家にいることが多くなったんです。

――“懇意にしている”というのは、男女の関係ということですよね。

石橋:そうでしょうね。ただその女性が非常に献身的に父をサポートしてくれて、介助役を積極的に引き受けてくれたんです。人間としても朗らかな方で、とても感謝しています。

離婚が成立し、家に残されたのは…

――お母様は……。

石橋:父は健康に携わる仕事に就いていたのに病院嫌いで、母はそれを忸怩たる思いで見ていたようです。
だから失明したときも「自己責任でしょ」と呆れていました。もともと父と母はあまり折り合いがよくなく、記憶するかぎりよく喧嘩をしていましたから。

1年くらい前から、母が仕事で遠方に行くことが多くなり、家を空けがちになりました。そのタイミングで、女性が介助のために家に来る頻度がだいぶ増えたのです。さすがに母も思うところがあったのか、1ヶ月くらい前に離婚が成立しました。だから、我が家に母はいなくて、父、私、女性で暮らしています。

――石橋さんご自身は、女性に対して反感は。

石橋:ないです。母がいたころも、父はお酒を飲めないので、母と女性と私で一緒に飲んだりしましたし。話題も「大学はどう?」「最近のお父さんの容態は……」と、結構一般的だと思います。むしろ、父に対してのほうが思うところがありますね。

新興宗教に惹かれた背景を紐解いてみると…

――“クセ強”エピソードの続きをどうぞ。


石橋:とにかく監督に服しない人で。ヘルパーさんから筋力低下を指摘されて歩行訓練に行くよう促されたら「俺は毎日懸垂100回、スクワット200回やっているんだ」という意味不明な嘘をついたり、銀行のATMでお金を引き出すのに手間取ったら「俺の金なのになんで下ろせないんだ」と騒いで銀行員を困らせたり……。

このご時世に人の容姿をコンプラ違反の言葉でいじり、平気で本人に言いますし。母と喧嘩になってヒートアップしたときは殴りかかったことがあるのですが、失明しているので普通に返り討ちにされていたりとか……。

――強烈です(笑)。石橋さんが、人ではない大きな力にあやかりたくなるのがわかる気もします。

石橋:私自身、なぜ自分が新興宗教という存在に惹かれているのか、説明がつきません。ただ、自分の人生に起きたすべてのことを真正面から受け止めていたら、疲弊してしまうとは思っているんです。もともと容姿にコンプレックスがあり、運動もダメで、人並みにできるものといえば勉強くらいでした。自分の家庭環境をとりたてて特殊と感じたことはありませんが、もしかすると捻転した思いが根底にあるのかもしれないですね。

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ゆるやかに、でも確実に痛みが増えていくとき、人は超人的な何かにすがりたくなる。信じることで道が拓けると解く宗教を笑い、インチキだと唾棄できる人間は、どれほど幸せか。

美容整形を繰り返し、「理想ではなく及第点に近づきたい」と自らを低く見積もる石橋さん。彼女が「ここ最近はハッピー」と笑顔を見せたとき、心にほのかなあかりが灯った気がした。

早稲田大の22歳女性が“新興宗教のグッズ収集”に目覚めたワケ「入信しようと思ったことはない」
石橋陽香


早稲田大の22歳女性が“新興宗教のグッズ収集”に目覚めたワケ「入信しようと思ったことはない」
石橋陽香


早稲田大の22歳女性が“新興宗教のグッズ収集”に目覚めたワケ「入信しようと思ったことはない」
石橋陽香


<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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