“ワケアリ”や“クセつよ”を理由に相場よりも割安で住める賃貸物件が、東京で一人暮らしをする若者などを中心に人気を集めているという。
うなぎの寝床のように狭く細長い形状の物件や、築年数が非常に古い物件に住む若者たちは、いつの時代もメディアで取り上げられてきたが、近頃は“狭小物件”などを紹介する内見動画がSNSでも人気コンテンツである。
物価高に直面する首都圏での生活環境の変化や経済事情を背景に、ひと昔前よりもかなり現実的な選択肢となっているようだ。

しかし、リアルな住み心地などは当事者にしかわからないことも多い。“そこに住む理由”には、人生観までも映し出されるはず。

京大卒、高給フリーターの27歳男性が“狭小アパート”に住み続...の画像はこちら >>
今回は渋谷区の京王線某駅から徒歩15分、5.5畳ワンルーム(約15平米)の賃貸アパートに暮らす松本和馬さん(27歳・仮名)のもとを訪れた。

東京大学と並び立つ最難関大学・京都大学を卒業後、狭小物件でフリーター生活を送る現在の暮らしぶりを聞いた。

5年かけて京大を卒業し、ぬるっと上京

――松本さんの地元は大阪とのこと。一人暮らしを始めたのは、大学進学のタイミングですか?

松本:そうですね。浪人も留年もしていて、23歳まで京都に5年間いました。卒業後は知人とアプリ開発やWeb制作の会社を立ち上げてからは、滋賀に2年ほど。もともとプログラミングが好きで、そういう授業なんかも大学でよく取っていましたが、結局1年ほどで会社の事業を畳み、上京したのが2024年11月です。

――学生時代、就職は考えなかったんですか?

松本:全く考えなかったですね。僕が大学生の頃は、大学2年くらいからインターンに行き始める学生も多くて、そういう風潮に反抗していたんです。いつも就活のことばかり話している大学生が本当に嫌いで、ずっと反抗していたら気づいたときには全てが終わっていました。


――(笑)。

松本:そもそも就職も別にしたくなかったですし、シンプルに能力的にも就活ができなかったという感じです。2024年4月に会社を畳んで半年ほどは、バイトしながらたまに後輩と飲むみたいな生活を送っていました。大学で仲の良かった同期の友人が何人かいて、彼らがみんな就職などで東京に出ていたので、仕事もないまま、とにかく私も上京することにしました。

家賃5万円で新宿も徒歩圏

――最初に一人暮らしを始めた部屋は、どんな部屋だったんでしょうか?

松本:なんの変哲もない、家賃5万円強の7~8畳くらいの1Kでした。大学3年のときにコロナ禍になり、何か面白い経験がしたいなと思って、3年の後期からは熊野寮という月4000円で住める京大の寮にも籍を置くようになりました。

京大卒、高給フリーターの27歳男性が“狭小アパート”に住み続けるワケ。5畳半でネズミやカビと格闘する日々
熊野寮の2人部屋(提供写真)
――賃貸アパートとの2拠点生活って、寮の規約的にアリなんですかね。

松本:あまり良くはなかったのかもしれないですけど、他の寮の住人がOKならOKみたいな感じでしたね。結局、学生が管理している寮なので。留年して5年生になってからは、実家から家賃を送ってもらえなくなり、アパートのほうは完全に引き払いました。

――京大の熊野寮って、どんなところなんですか?

松本:風呂・トイレは共同で私は大学5年生の時に2人部屋でしたが、基本は4人部屋ということもあって部屋はまあまあ広いです。談話室もあり、シェアハウス的な雰囲気で居心地は良かったですね。サークル活動にも便利でした。
いろんなサークルを転々としたんですが、3年生の時にウイスキーのサークルを自分で始めて、寮内にバーみたいなスペースをつくって活動させてもらっていましたね。

京大卒、高給フリーターの27歳男性が“狭小アパート”に住み続けるワケ。5畳半でネズミやカビと格闘する日々
(提供写真)
――なるほど。卒業後は滋賀で会社を?

松本:滋賀に移ったのは僕がいったん、京都から離れたかっただけです。会社の拠点は京都でした。京都まで電車で30分ほどの距離感だったので、大津駅近くに家賃3万円の6畳ワンルームを借りていました。

――現在住んでいる5.5畳の部屋は、どういう基準で探したんですか?

松本:同期の友人が西新宿に住んでいて、その近所で家賃がなるべく安い部屋を探すことにしたんですが、鉄筋コンクリートは自分の中で絶対に譲れない条件でした。滋賀の賃貸が鉄骨建てで、隣人のいびきが聞こえるくらい防音がガバガバだったので。この部屋は隣人の生活音や話し声も気にならないですし、深夜に友人とわりと大きな声で話しても、とくに問題ありません。

――新宿も徒歩圏と言える立地ですが、月々の家賃は?

松本:5万円です。友人の自宅に居候しながら、3週間くらい粘りに粘りましたね。十何件ぐらい内見して、ようやく仲介会社から紹介してもらったのが、この築40年以上の物件でした。

夏場の湿度が高すぎて冬服にカビが大繁殖

京大卒、高給フリーターの27歳男性が“狭小アパート”に住み続けるワケ。5畳半でネズミやカビと格闘する日々
右側は出窓を活用した収納スペース
――住み心地はいかがですか?

松本:6畳から5.5畳ということで、滋賀にいた頃より若干狭くなっているんですが、このレベルの狭さの部屋だと、0.5畳の差はけっこう大きいです。6畳だと3人分の居場所を確保できるので友人も呼びやすいんですけど、5.5畳だと私含めて2人が限界ですね。


――物が少ないからか、意外と圧迫感は感じないですけどね。

松本:昔からけっこう潔癖で、片付けや掃除は好きですし、しばらく使っていないものはすぐ捨てられるタイプではあります。本や趣味のものもありつつ、服は最低限。1用途1アイテムで、無駄なものはないです。出窓が地味にありがたくて、自分で目隠しをして収納スペースとして活用しています。あと、玄関・台所が扉で仕切られていないので、あまり狭く見えないというのもあるかと。

京大卒、高給フリーターの27歳男性が“狭小アパート”に住み続けるワケ。5畳半でネズミやカビと格闘する日々
室内
――洗濯はどこでしているんですか?

松本:バルコニーに洗濯機があります。この部屋の一番大きな不満は、ネズミがバルコニーに出ることと、湿度が高すぎることですね。とくに糞のニオイがキツくて……。ネズミと窓越しによく目が合います。バルコニーに出るのは洗濯の時だけですし、ニオイも部屋の中までは入ってこないので、ギリ我慢できていますけど。

京大卒、高給フリーターの27歳男性が“狭小アパート”に住み続けるワケ。5畳半でネズミやカビと格闘する日々
ネズミがよく出るというバルコニー
――半地下ってほどではないですけど、竪穴式住居みたいに部屋が周りの地面より一段低い位置にあるんですね。


松本:夏場は普通に湿度80%超えです。去年の夏、収納していた冬服にカビが大繁殖してしまったので、除湿器を導入しています。最初の内見時から湿度に関しては、けっこう覚悟していたんですけど。業者に張り替えてもらう前はクロス一面がカビで真っ黒になっていて、あれはけっこう壮絶な光景でした。

プチストレスはたくさんある

京大卒、高給フリーターの27歳男性が“狭小アパート”に住み続けるワケ。5畳半でネズミやカビと格闘する日々
窓の外が泡だらけに…(提供写真)
松本:洗濯機の排水が2階から跳ね落ちて、窓の外が泡だらけになっていたこともありました。その1回だけですが、あれも本当にびっくりしましたね。

――ちょっと怖くなってきたんですが、ユニットバスのパネルがボコボコしているのは何なんですか?

松本:引っ越したときからこうなんですよね。おそらく前の住人がカビを繁殖させすぎて、中に空気が入っちゃったのかなと。表面のカビを全部掃除して、いくら綺麗にしても、すぐにカビがまた生えてくるんです。

――やっぱり、所々に築40年を感じさせる部屋ではありますね。

京大卒、高給フリーターの27歳男性が“狭小アパート”に住み続けるワケ。5畳半でネズミやカビと格闘する日々
ユニットバスのパネルが謎にボコボコ…
松本:1階の部屋ということもあってか、蟻みたいな虫も出ますし、つい最近も台所の蛇口が外れて、1週間ほどシンクが使えなくなりました。そうやって冷静に考えてみると、プチストレスはたくさんあります。


――なんかスミマセン。でも、松本さんって今は普通にフルタイムで働いているんですよね?

松本:この部屋に引っ越してからも2~3ヶ月ほどフラフラしていましたが、昨年4月からは新宿のマーケティング会社で社員補助のバイトをしています。カレンダー通りの出社勤務で、ドアトゥドアで30分弱。時給2100円くらいなので、貯金する余裕も一応ありますね。社員が残業しまくっているので、今の職場で社員になることは全く考えていないです。

――それくらい収入があれば引っ越しを検討しても良いと思うんですけど。今のところは考えていないんですか?

松本:8万とか9万とか家賃に掛けても、結局1Kとかの部屋に住むことになるなら別にここでいいかなって。慣れればあまり不便も感じません。

――健康が心配ですよ!

<取材・文・撮影/伊藤綾>

―[狭すぎる家、住んでみたらこうだった]―

【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。
X(旧Twitter):@tsuitachiii
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