「まさかここで捕まるなんて」――ハンドルを握りながら、そう青ざめた運転手もいるのではないでしょうか。あおり運転は令和2年6月に「妨害運転罪」が創設され厳罰化されましたが、それでも危険な運転はなくなりません。
ただ、あおった側が“見ていないようで見られていた”というケースも、また少なくないようです。
あおり運転をした“ヤンキー仕様の車”が返り討ちに。高速道路で...の画像はこちら >>
法務省の令和7年版犯罪白書によると、妨害運転(あおり運転)で送致された件数は令和6年で146件。前年から44件増え、4割以上の増加となりました。加えて、内閣府の令和7年版交通安全白書によれば、令和6年に高速道路で摘発された「車間距離不保持」は4,713件。一般道を含まない、高速道路だけでこの件数です。詰めて走る行為は、思っている以上に取締りの対象になっているのが実態です。

今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだ人気記事から、あおり運転をめぐる実録エピソードを2本。ヤンキー仕様の車が高速道路で覆面パトカーに連行される瞬間と、大型ダンプがトンネルで警察に捕まる瞬間です。

記事の後半では、あおり運転の摘発の実態と、記事にも登場した“覆面パトカー”の意外な呼び名について紹介します。

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①駐車スペースからハミ出す“DQN(ヤンキー)仕様の車”

あおり運転をした“ヤンキー仕様の車”が返り討ちに。高速道路で覆面パトカーに連行されるまで/「覆面パトカー」は正式名称じゃない?調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
 原田裕子さん(仮名・20代)は、レンタカーを借り、友人3人と高速道路を走っていた。まだ運転に慣れていない原田さんたちは、サービスエリアごとに運転を交代しながら目的地に向かっていたという。

 とあるサービスエリアで、「様子のおかしい車と遭遇した」そうだ。

「私たちの横の黒い車が、駐車スペースの枠からズレて停めていました。
フロント以外の窓はスモークが貼られており、車高は低く、タイヤは八の字です。明らかにDQN(ヤンキー)仕様の車でした」

あおり運転をした“ヤンキー仕様の車”が返り討ちに。高速道路で覆面パトカーに連行されるまで/「覆面パトカー」は正式名称じゃない?調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
 原田さんたちは車に戻ったのだが、その車が枠から大きくはみ出していたため、後部座席のドアが開かなかった。仕方なく、運転手が来るまで待つことにした。

「サングラスに金のネックレスをした、いかにも怖そうな男性が現れました。こちらに気づいた彼は『何?』と一言。『すみません。後ろに乗れないので』と頭を下げると、“ニヤッ”と笑い車に乗り込んだんです」

繰り返されるパッシングとクラクションに震えが止まらず

あおり運転をした“ヤンキー仕様の車”が返り討ちに。高速道路で覆面パトカーに連行されるまで/「覆面パトカー」は正式名称じゃない?調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
 黒い車が走り出したことを確認した原田さんたちは、胸を撫で下ろした。しかし、しばらくすると、前方の左車線には例の黒い車が……。“どうかこちらに気づきませんように”と祈りながら追い抜いたという。

 そして、しばらくしてから左車線に戻り、そのまま走っていると、ありえない展開が待っていた。

黒い車がものすごいスピードで真横に迫ってきました。私たちのすぐ後ろに入り込むと、パッシングとクラクションを繰り返します。私たちは震え上がりました」

 原田さんの友人は、「彼、笑ってる! 早く逃げて!」と叫んだ。
しかし、アクセルを踏み込んで逃げたところで、彼の運転テクニックは原田さんたちよりも上。“すぐに追いつかれてしまうので無駄だろう”と思っていたと振り返る。黒い車の運転手は、窓を開けて何かを叫んでいたが、原田さんは“あること”に気づいていたという。

覆面パトカーらしきクラウンに希望を託す

あおり運転をした“ヤンキー仕様の車”が返り討ちに。高速道路で覆面パトカーに連行されるまで/「覆面パトカー」は正式名称じゃない?調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
「後方に白い覆面パトカーらしきクラウンの姿が見えていました。そのクラウンに希望を託すほかなかったです。ちなみに、黒い車はクラウンには気づいていなかった。ただ、私たちがスピードを出して捕まったら元も子もないので、視界の隅にクラウンを確認しながら、徐々に黒い車へ近づかせるための絶妙なアクセルワークが求められました」

 そして、次の瞬間——。クラウンのパトランプが光ると、「そこの黒の車、付いてきてくださーい」。黒い車はみるみる減速していき、パトカーに誘導されて近くのパーキングエリアに消えていった。

 その後、黒い車と遭遇することはなく、無事に目的地に着いた。原田さんは「あの日、私の運転スキルはグッと飛躍したと思う」と苦笑いだった。

あおり運転をした“ヤンキー仕様の車”が返り討ちに。高速道路で覆面パトカーに連行されるまで/「覆面パトカー」は正式名称じゃない?調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです

②明らかにあおってくるトラック運転手

 主に木材をダンプトラックで運搬している山本憲司さん(仮名・30代)。普段は下道を使用するのだが、その日は片道2時間かかる場所だったため、高速道路を走行していた。

「いくら高速道路とはいっても、重い材を積んでいるのであまりスピードを出せません。
なので、左車線を走行するようにしていました」

あおり運転をした“ヤンキー仕様の車”が返り討ちに。高速道路で覆面パトカーに連行されるまで/「覆面パトカー」は正式名称じゃない?調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです


 そこに、後方から大型のダンプトラックがかなりのスピードで近づいてきたという。山本さんは、「嫌だな」と思いながらも、荷物を安全に運搬しなくてはいけない状況のため、そのままのスピードで走行を続けることにしたそうだ。

横から追い越してくれるだろうと考えていました。しかし、運転手はしつこく私の後ろに付き、明らかにあおってきたんです

危険なスピード競争に巻き込まれないように必死

 山本さんは「冷静さを保ち、スピード競争に巻き込まれないように」と必死だったという。だが、相手の運転手の危険な運転はますますエスカレートした。

「彼は、急かして近づいては私の車にぶつかりそうになり、ヒヤヒヤしながらの運転が続きました。私は、できる限り安全な距離を保っていたのですが……」

 その後も容赦なく「あおり運転」は続き、周りの車の運転手たちもトラックの危険な運転に困惑していた。やがて、高速道路のトンネルに差し掛かった。

 トンネル内はスピードが制限されている。山本さんがスピードを落として、慎重にトンネル内に進んだそのとき……。予想外の光景を目の当たりにする。

「大型ダンプが、まさに私を追い越そうとした瞬間、パトカーが現れたんです。警察官が大型ダンプを停止させ、違反キップを切られる姿を見ました」

 高速道路上でのあおり運転が原因で、死亡事故も起きている。
どんな場面でも冷静に、くれぐれも自分自身が被害者、加害者にならないように注意が必要だ。

あおり運転をした“ヤンキー仕様の車”が返り討ちに。高速道路で覆面パトカーに連行されるまで/「覆面パトカー」は正式名称じゃない?調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
<取材・文/chimi86>

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■あおった側が捕まる時代へ

今回の2つのエピソードは、いずれも“あおった側”が警察に捕まる結末でした。実は、こうしたケースは決して珍しくありません。

警察庁の「危険!『あおり運転』はやめましょう」および大阪府警の解説によれば、妨害運転罪の罰則は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、違反点数25点で免許取消し(欠格期間2年)。著しい交通の危険を生じさせた場合は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、35点で取消し(欠格期間3年)となります。前歴や累積点数がある場合は、欠格期間がさらに長くなることもあります。仮に妨害運転罪の適用が難しい場合でも、悪質・危険な運転に伴って暴行や脅迫などがあり、運転させると著しく交通の危険が生じるおそれがあると認められる場合には、「危険性帯有者」として免許停止処分の対象になります。

さらに、令和8年4月1日施行の改正で、自動車等が自転車等の右側を通過する際の通行方法(道路交通法18条3項)に関する違反が妨害運転の類型に追加され、対象となる違反はこれまでの10類型から11類型に拡大されました。取締りの網は、着実に広がっています。

あおり運転をした“ヤンキー仕様の車”が返り討ちに。高速道路で覆面パトカーに連行されるまで/「覆面パトカー」は正式名称じゃない?調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです

■“覆面パトカー”は正式名称じゃなかった

ところで、最初の被害者、20代女性が目撃した“白い覆面パトカーらしきクラウン”。そもそも「覆面パトカー」という言い方は俗称で、警察の公的な書類にはほとんど登場しないのをご存じでしょうか。

警察庁の令和8年7月の入札公告を見てみると、そこに書かれている品目名は「交通取締用四輪車(反転警光灯)」。屋根の赤色灯が普段は格納されており、緊急時に反転して現れる仕組みからついた呼び名だとされています。
同じ公告では警ら車なども含めて500台以上が調達にかけられており、そのうち反転警光灯の車両が26台。道路上での“見えない目”は、今も更新され続けています。

そして、路上の警察官だけが監視しているわけでもありません。令和元年版警察白書には、各高速道路交通警察隊が航空隊と連携し、ヘリコプターで上空から発見した悪質・危険な車両を地上のパトカーが検挙する“空陸一体”の取締りが紹介されています。千葉県警も、あおり運転につながる違反に対して「警察用航空機と連携した取締り」を実施していることを現在も公表しています。

20代女性が「白い覆面パトカーらしきクラウン」を見つけて希望を託した、あの一瞬。そして、大型ダンプがトンネルで追い越そうとした瞬間に現れたパトカー。どちらも、ドライバーが「まさか」と思う場所で、確実に仕事をしていたわけです。

あおる側は「相手は反撃してこない」「見ている人はいない」と踏んでハンドルを握っているのかもしれません。しかし、地上には反転警光灯、上空にはヘリコプター。“見ていないようで、見られている”のが、いまの道路の現実です。ハンドルを握る誰もが、そのことを忘れてはいけないのだと思います。


あおり運転をした“ヤンキー仕様の車”が返り討ちに。高速道路で覆面パトカーに連行されるまで/「覆面パトカー」は正式名称じゃない?調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
<再構成/日刊SPA!編集部>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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