関東で育ち、40代半ばにしてバイト生活に追い込まれていた芸人が、前例のない方法で再起を図った。 それがなぜ新喜劇だったのか? 文化の違いに直面したことはあったのか? 本人を直撃した。
40代にて挑戦を決意した経緯
――千葉さんは、1996年に同級生の関暁夫さんとともに吉本興業の養成所NSCに東京2期生として入学。「ハローバイバイ」や「ギンナナ」というコンビで活動をしてきました。同劇場への吉本新喜劇入りは、唐突にも感じますが、どんな経緯があったんですか?千葉:大阪に移る前、ギンナナでの活動も10年が経っていたんですが、お世辞にも調子が良かったとは言えなくて。40歳を過ぎてバイトしないといけなくなって「人生どうするんだよ」と絶望しかけていましたよ。
――自分の将来を改めて見つめないといけないと。
千葉:「吉本に大した儲けをもたらしてないくせに」と思っていたんですが、あらためて振り返ると「自分は組織に認められるようなことができていたのか?」と自問自答してしまい……。「前人未到の分野は何だろう」なんて考え始めたわけです。
――数ある選択肢から、なぜ新喜劇だったんですか?
千葉:間寛平師匠と池乃めだか師匠のやりとりを袖で見させてもらった際に「この年齢で、ここまで爆笑をとれる化け物がいるのか」と衝撃を受けたことがあります。その後、石田靖さんが東京でコントライブをやるときに参加させていただき、新喜劇的なノリのあるコントを経験しているうちに、大阪もいいなとぼんやり思い始めました。
大阪移住を決めたくっきー!の一言
――ぼんやりが、どう「決意」に変わっていくんですか?千葉:野性爆弾のくっきー!さんがきっかけですよ。
――どんなきっかけでしょう?
千葉:僕が趣味で盆栽の写真をInstagramにアップしていたんですが、くっきー!さんが喫煙所で「盆栽、ええなぁ」と声をかけてくれて。「大阪の古民家が安いから、そこ借りて盆栽の配信したらええやん! 大阪行け!」と突然言われたんです。
――千葉さんが大阪移住を考えていることを知っていたんですか?
千葉:いえ、誰にも言っていなかったのでドキッとしましたよ! 内々に初めて、大阪行きを考えていることを話したら、いつもふざけているくっきー!さんが、大真面目に「面白いと思ったら、すぐ動け!」と言ってくれて、そこで決心したのです。
――アツいですね! 他に相談した芸人さんもいますか?
千葉:相談ではないんですが、小籔(千豊)さんに新喜劇に入りたい気持ちは伝えました。そして「いつかは、腕があるけどくすぶっている東京の芸人を集めて、東京に新喜劇のような場所を作りたい」と。
――それに対して小籔さんは?
千葉:「新喜劇は大阪だけのもんや! 変なフランチャイズ作らんでくれ!」と厳しい返答で。でも「新喜劇を研究するのは、お前の自由や。骨を埋める覚悟でおいでや」と言っていただきました。
“関東弁座員”への洗礼
千葉:やっぱり、お客さんは関西弁でないことに異物感があったみたいです。SNSでも「関東弁いらんねん!」「東京に帰れ」的な書き込みもあって。
――それは辛いですね。新喜劇メンバーはいかがでしたか?
千葉:関西弁にするよう言われることもなく、受け入れてくださいました。千葉公平という芸名も、寛平師匠がつけてくれましたし。
――ずっと、本名の金成公信で活動してこられましたよね。
千葉:僕が千葉出身だと話したら、最初は「じゃあ千葉真一」と言われて。「いや、それはもういます!」となり(笑)。 師匠は、数日考えてくださいました。いくつか候補を出していただいた中から、僕の本名から一文字と寛平師匠から一文字取って「公平」になりました。
――名前の一部を継承するのは、落語の師弟関係のようです。それだけ受け入れてくれている証拠ですね。舞台に出る上でのカルチャーショックはありましたか?
千葉:舞台なので、稽古をガッツリして本番かと思っていたんですが、そうじゃなかったところですかね。
――演劇などでは、数ヶ月稽古するところも多いですよね。
千葉:新喜劇前日に1回と、当日朝にちょっとやるだけで、もう本番なんです。これには、僕も最初は面食らいましたよ。
新喜劇に救われ、新たな野望を抱く
――新喜劇入りから6年経ちました。現在はどんな活動状況ですか?千葉:週ごとに変わる公演内容のストーリー上で、僕に役があればお声がかかる感じです。
――もう、しっかり大阪の芸人さんですね。
千葉:本当にありがたいですよ。東京から出る間際は絶望していましたが、新喜劇に人生を救われました。
――この先の、野望を教えてください。
千葉:大阪に来たばかりの頃は、くっきー!さんに言ってもらった通り古民家に住んでいたんですが、本当にボロくて。家の壁もトタンの部分があったり、屋根裏を野生動物がうろついたりするのが日常でした。 極貧から始まったので、いずれは大阪に豪邸を建てたいですね!
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40代半ばで東京を離れ、前例のない道を選んだ千葉さん。批判を浴びながらも舞台に立ち続けた結果、芸人人生を大きく好転させた。 「大阪に豪邸を建てたい」と笑う姿は、夢物語を語る50歳ではない。人生の折り返しを過ぎてからでも、新しい挑戦で道は開けることを証明した当事者の言葉だった。
<取材・文/Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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