朝日新聞で20年以上、政治取材に携わってきた今野忍氏が、永田町の表舞台だけでは見えない「政治のリアル」に迫る。今回は、9月に”解体”が決まった中道改革連合の裏側を読み解く。
看板は1つで厨房は2つ。急ごしらえだった中道
潰れかけのラーメン屋が2軒あった。しばらくして、その跡地に「新装開店」の幟が立つ。おっ、どんな店だろう。入ってみると、前の店の店長2人が並んでラーメンを作っていた――。これが今年1月にできた中道改革連合である。代表は斉藤鉄夫さんと野田佳彦さん。幹事長も政調会長、国対委員長も2人ずつ。公明と立憲から1人ずつ出したからだ。看板は1つで厨房は2つ。党の名前を初めて聞いたとき私は関東連合かと思った。
急いだ事情はわかる。
その後、公明の幹事長は、参院で立憲と統一会派を組む話を「相いれない」とはねつけた。5月の新潟県知事選では公明の県組織が現職を支持するのに立憲は自前の県議を立てた。9月の沖縄県知事選でも立憲は現職を、公明は自民が推す新人を応援した。板挟みの中道は決められず、自主投票。同じ看板を掲げた人間が、同じ選挙で別陣営に立っている。これで一つの党だと言われても有権者は困る。
8月31日、ついに3党は合流の断念を決定した。
「厚い信頼と固い絆と深い友情は、新たな形態がどうなるにせよ、『分裂』という言葉になじむか」
新たな形態とは?と記者が問うと「解釈はお任せします」。ネットではオガジュン構文だと揶揄されたが、9月8日に、中道に議員を一人残して存続させ、立憲系衆院議員は新党をつくる構想だと判明した。
ここからが本題だ。カネの話である。政党の“別れ方”は2種類ある。「分党」と「分派」だ。分党は、家を壊して土地を分ける方式。手続きは面倒だが、財産は分けられる。分派は、片方が荷物をまとめて出ていくだけ。家のお金は持ち出せない。中道が選んだのは後者だ。
分党の手続きには1か月半以上かかる。秋の臨時国会に間に合わないおそれがあるため分派を選択したのか。なら、なぜ中道に1人残すのか?
中道が今年もらう政党交付金は23億円あまり。すでに半分は受け取り済みで、10月と12月に残りの11億7000万円が入る。実は分派しても、中道を存続させれば残りのカネが入ってくるのだ。まさか、カネのため? そうでなければ「受け取らない。国庫に返納する」と言えばいいだけだ。
8億円を国庫返納した「みんなの党」
12年前に解党したみんなの党。当時の代表、浅尾慶一郎さんは後に「党の資産を議員で山分けすれば一人8000万円と考える者もいた」と明かしている。それでも「税金のムダをなくすと訴えてきた党だから」と8億円を国庫に返した。今も語り草である。中道は政党交付金以外にもクラウドファンディングで1億円あまりを集めた。当初の使い道は落選議員の支援と全国対話集会だったが、党のポスター代になり、8月末には「統一会派結成と勢力拡大に使う」に変わった。寄付者は中道に出したのに、党が事実上の解党なら新婚祝いで離婚届の印紙を買うようなものだ。
先日飲んだ中道の前衆院議員は野球に例えた。「先発が8回までに20点取られてから出ていくクローザーですよ」と。それでも、小川さんが結論を先送りしなかったことは評価していた。同感だ。敗戦処理は誰かがやらないといけない。
ただ、クローザーの仕事は試合を終わらせることであって、明日の試合を作ることではない。あれだけ理念を語って始まった党が、今問われているのはレジの中身である。
政治記者が稀に行う、壁に耳を押し当てて非公開の会議・会合の内容を探る取材手法。「聴診器を使う先輩もいた」(今野氏)という
―[今野忍の政治裏読みガイド 永田町[壁耳]ノート]―
【今野忍】
1975年生まれ。
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