10月28日、ソフトバンクがDeNAとの日本シリーズ第4戦を制し、4連勝で2年連続13度目の日本一に輝いた。SNSではホークスの強さをたたえる声が相次ぐ一方、冒頭のような不満も漏れている。
総年俸81億円の資金力が支えるソフトバンクの強さ
第3戦まではすべて延長戦という接戦だったが、終わってみれば4戦全勝。その勝負強さは際立っていた。では、ホークスは豊富な資金力だけで勝っているのか。確かに選手の推定総年俸は12球団トップだ。ただ、資金力をどう生かしているかまで目を向けると、常勝軍団を支える別の強みが見えてくる。
今回の日本シリーズで最も象徴的だったのは第2戦ではないか。1点を追う9回、2023年オフに西武からFA移籍した山川穂高が代打同点本塁打を放つと、延長10回には育成ドラフト出身の川村友斗が決勝アーチ。実績ある大物と育成からはい上がった伏兵が、同じ試合で勝利を引き寄せた。
この対照的な2人の存在こそ、ホークスの強さを考えるヒントになる。大型補強と育成。その両方に積極的に取り組める背景には、他球団を上回る資金力がある。
野球データ分析会社DELTAが今年3月に公表した開幕前の推定総年俸では、ソフトバンクは81.2億円で12球団トップ。2位巨人の60.1億円を20億円以上上回り、パ・リーグで2番目の日本ハム(45.6億円)とは35億円以上もの開きがあった。
この数字からも、ホークスが選手への待遇に多額の資金を投じていることがわかる。山川のような実績ある選手をFAで獲得するだけでなく、生え抜きの主力にも高額な年俸を用意できることが強みだ。
今秋ドラフトでは育成で史上最多15人指名
だが、ホークスが力を入れているのは、実績ある選手の補強だけではない。もう一つの大きな特徴が、育成ドラフトの積極活用である。今年7月31日時点で、ソフトバンクの育成選手は48人。12球団で最少だった阪神ら4球団の各10人と比べると大きな差がある。支配下の70人と合わせて、118人もの選手を抱えていた。
今秋のドラフトでも、その方針は変わらない。支配下9人に加え、育成では史上最多となる15人を指名。合計24人という人数も、1球団の指名数として過去最多だった。
育成ドラフトの魅力は、通常ドラフトでは拾い切れない原石を発掘できることにある。指名人数を増やせば、それだけ埋もれた逸材を見つける機会も広がる。もちろん、大勢を獲得したからといって、全員が一軍の戦力になるわけではない。
4軍制と充実した施設で育てる原石
そこで生きてくるのが、筑後の大規模な育成施設と4軍制だ。若手に実戦機会を与えるだけでなく、投球フォームを分析する計測機器なども備え、選手が自身の課題に取り組める環境を整えている。選手の獲得に加え、育てるための施設や指導体制にも資金を投じてきた。実際、周東佑京、牧原大成、大関友久らは育成ドラフトで入団し、主力へと成長した。第2戦で決勝弾を放った川村も、2021年の育成ドラフト2位である。育成の成功率が他球団より高いとまでは言えないが、こうした選手たちが一軍で活躍している事実は、ホークスの選手層の厚さを物語っている。
育成ドラフトで成果を上げる半面、ドラフト1位選手の伸び悩みは近年の課題とされてきた。それだけに、2023年ドラフト1位の前田悠伍が今季12勝1敗、防御率2.10と飛躍したのは明るい材料だ。日本一を決めた第4戦でも先発を任された。
また、外国人選手にも、長い時間をかけて主力へ成長した例がある。2017年に育成契約で加入したモイネロは、救援投手として実績を積んだ後、先発へ転向。今では投手陣の柱となり、日本シリーズ第2戦でも7回無失点、8奪三振の好投を見せた。
ポスティングを認めた実績なし…海外移籍の方針は
モイネロのように、長年チームを支える外国人選手がいる一方、日本人選手の海外移籍についてもホークスには特徴的な方針がある。ソフトバンクは12球団で唯一、ポスティングシステムによるメジャー移籍を認めた実績がない。
ポスティングを認めれば、MLB球団から譲渡金を得られる。その半面、主力を海外FA権取得前に失うことになる。球団の承認が必要な制度だけに、どちらを選ぶかは各球団の判断次第といえる。
もっとも、城島健司CBOは今年7月、球団にメリットがあれば容認を検討する考えを示している。ホークスにとっては、現時点では譲渡金を得るより主力を保有し続ける価値の方が大きい、という見方もできそうだ。
売上高509億円の経営基盤が広げる「勝つための選択肢」
ホークスの強さを支える経済的な基盤にも注目したい。2026年2月期の売上高は約509億円、純利益は約57億円。親会社の資金力だけでなく、自らも大きな収益を生み出している。日本一から一夜明けた29日には、広島・森下暢仁や西武・高橋光成の獲得調査が報じられた。ともにFA権を持つ投手で、頂点に立った直後から来季の補強に目を向けていることがうかがえる。
FA補強で即戦力を獲得し、育成ドラフトでは埋もれた才能を探す。
資金力があるだけで勝てるほど、プロ野球は甘くない。だが、その資金をどこに使うかで、勝つための選択肢は大きく変わる。4連勝で日本一に輝いたホークスが示したのは、まさにその差だったのではないだろうか。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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