◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 この春、生き方が変わった。開幕直後の4月上旬。

阪神の2軍施設で楽しそうに練習している人がいた。大竹耕太郎投手(29)。ソフトバンクから現役ドラフトで移籍し、3年目を迎える。投球回170回と15勝を目標に掲げた今季は、春季キャンプ終盤に下肢の張りで離脱。リハビリ中だ。本来投げるはずだった1軍のマウンドには、他の選手がいる。なのに…。ここで質問できるのが記者の特権だ。「どうして、そんなに楽しそうなんですか?」

 大竹は数秒間回想してから、口にした。「おとといまでは落ち込んでいました」。そうは見えない。「西(勇輝)さんに話を聞いて、気持ちの持ち方が変わりました。

自分の機嫌は自分で取るって」。丁寧に言葉を紡いだ。「同じ練習メニューでも、『なんでここにいるんだろう』と思うか『1軍で救世主になる』とイメージしながらやるか。効果、変わってきそうじゃないですか」。合点がいった。

 17年育成ドラフト4位でソフトバンクに入団。阪神では2年連続2ケタ勝利を挙げたが2軍生活も長く「若い時は1試合打たれたら野球人生が終わると思っていた。試合の結果イコール人生みたいな」と明かす。弱肉強食の世界。だからこそ、己の今だけに注力する。「他人が失敗したから『よっしゃ』なんて人生、嫌じゃないですか」。言葉に力がこもった。

 そうは言っても、他人と比べてしまうのが人間だ。私もその一人。どうすれば―。「僕は好きなことをして、機嫌がよくなる方法を探すようにしています。お香をたいてみたり」。大竹は1日の中日戦(バンテリンD)で今季初登板初先発。5回3失点で黒星を喫したが、ひのき舞台に戻った充実感があった。私はその夜、つらいダイエットを中断して大好きなラーメンをすすった。疲れた体に染みるほどうまかった。

 ◆直川 響(のおがわ・ひびき)2023年入社。阪神担当。入社以来、野球を中心に取材。

好きなラーメンは家系。

編集部おすすめ