メジャーリーグで、あの試合の裏側や日本人選手の頼れる同僚の秘話など、“サイドストーリー”に焦点を当てる「My Loving Baseball」。第2回はオリオールズ・菅野智之投手(35)がメジャー3勝目を挙げた4月28日(日本時間29日)のヤンキース戦で発揮した修正力に迫った。
アスリートの“気づき”に、ハッとさせられることがある。4月28日のヤンキース戦。今季からメジャーに挑戦した菅野にとって、名門球団との初対戦となったが、5回を5安打無失点に抑えて3勝目を挙げた。その試合でターニングポイントになったのは、2回だった。
マウンドに上がった菅野は、グラウンドキーパーを呼んだ。「初回にチザムに死球を当てた時、水をまきすぎているのか、(マウンドが)ちょっとぬかるんでいて、気になっていた」。踏み出した左足をつく部分と、プレート付近を指さしながら、土を入れることを要求したのだった。
その試合では初回に安打と四球でいきなり2死一、二塁の危機で5番・チザムを迎えた。カウント1―1からの3球目が、捕手の構えよりも約30センチも内角高めにそれて死球となった。続く満塁の危機はボルピを遊ゴロに仕留めて切り抜けたが、踏み出した足が沈み過ぎていることが制球が乱れる原因だと察知した。「乾いた砂が水分を吸ってくれたので、だいぶ違いました」。
その時、よみがえったのが、3月20日にキャンプ地のフロリダ州サラソタで行われたヤンキースとのオープン戦の記憶だ。その日は雨上がりの登板で、スパイクにこびりつく泥のような土に悩まされていた。その翌日。菅野は、ロッカーでスパイクの中敷きを取り換え、時折、膝の角度を確認するしぐさを見せながら、キャッチボールを行った。
「土がついたり、いろいろあったので、そういうのも確認していて。インソールの(アーチ部分の)形状はいろいろ持っていて。自分の足の状態によって替えています。僕は、もともとX脚なんで、日によってアーチが高く感じる日があるんで」
数種類の中敷きを履き分ける右腕は、以後、スパイクの泥取り道具をベンチ裏に常備。一つ一つの経験から得た学びはすぐに取り入れ、対策に抜かりはない。
登板翌日は動画でフォームを確認し、微妙なフォームの崩れをチェックする。
【VTR】オリオールズ先発・菅野は初回に2死満塁の危機をしのぐ立ち上がり。オ軍打線は2回にロレアノの適時二塁打で先制。3回にはオハーンの3ランで突き放した。援護を得た菅野は5回に対戦を熱望していたジャッジを空振り三振に斬るなど無失点のままこの回限りで降板。救援陣が終盤のヤンキースの反撃をしのぎきった。