◆東京六大学野球春季リーグ戦 第5週第2日▽東大―法大(11日・神宮)
法大OBで、広島の強打者として「ミスター赤ヘル」の名で親しまれた山本浩二さん(78)が東京六大学野球連盟の創設100周年を記念するレジェンド始球式に登場。両校のスタンドからは大きな拍手が注がれた。
投げた瞬間、ため息が漏れた。「あ~っ!」。狙ったノーバウンド投球はならず、浩二さんは悔しさをにじませた。広島時代の永久欠番となった「8」を背に、「HOSEI」のユニホームで神宮に帰ってきた。報道陣の「お疲れさまでした」とのねぎらいに、「疲れてないよ!」と笑い、こう続けた。
「届かないのよ。体が言うことをきかないの。本当はノーバンで投げたかったよ。自己採点? 0点だね」
野球界では無名だった広島の県立校・廿日市(はつかいち)から投手として法大に入学。だが当時の松永怜一監督から打者としての才能を見いだされ、野手に転向した。
「神宮のマウンドで投げたことはない。新人戦では田淵(幸一)とバッテリーを組んで東大戦に先発したんだけど、東大球場だった。
松永監督と言えばノックが有名。通常の練習を終えた後、内野手の富田さんと外野手の浩二さんには特訓が課された。日没になるとボールに石灰をまぶし、ノックは続いた。
「めちゃくちゃ鍛えられた。苦しさしかないね。富田も同じように鍛えられていたから、へばるわけにはいかない。そういう意味では懐かしいね」
打棒は開花。
試合前の法大ナインには「全国のOBがみんな気にしているんだぞ」「4年間を大切にしてください」とエールを送った。そんな浩二さんにとって、学生野球の魅力とは何だろうか。
「一生懸命にやっている姿だな。ミスもいっぱいしたよ。でも一生懸命、ガムシャラにやった。よき仲間も持てた。苦しかったけど、いい思い出だよね」。原点の地で、青春時代に思いを馳せた。(加藤 弘士)