巨人の秋広優人内野手(22)、大江竜聖投手(26)とソフトバンクのリチャード内野手(25)の2対1のトレードが12日、電撃成立した。2024年ソフトバンク担当の田中昌宏記者が、ポテンシャルの塊だという8年目内野手を「見た」。

 リチャード内野手にとって、願ったりかなったりのトレードだろう。昨オフ、1回目の契約更改交渉でサインを保留。三笠杉彦GMに移籍を直訴したが「戦力として見ているから、それはできない」と慰留された経緯がある。モチベーションに大きく影響していたようなので、新天地で心機一転「やってやんぞ!」という心意気になっているはずだ。

 気は優しくて力持ち。師匠の山川穂高内野手も「パワーと飛距離ならメジャーでも天下を取れる」とポテンシャルに太鼓判を押す。24年1月の長崎自主トレでは、軟球の置きティー打撃にもかかわらず推定120メートル弾をぶっ放した。まさにケタ外れ。ちなみに牛乳を4リットル飲むのが日課。こちらもケタ外れだ。

 昨季、ウエスタン・リーグ5年連続本塁打王(と3年連続4度目の打点王)という空前絶後の記録を打ち立てた。だが本人は「下のタイトルなんて1ミリも欲しくない」とボヤく。

そう。リチャードの口癖は「1軍に来たら自分のプレーができない」なのだ。

 おかしいじゃないか。前述のパワー、小久保裕紀監督も「実は完成されている」と評する打撃フォーム、そして意外と上手な一、三塁の守備。オフには山川軍曹のもと「胃から汗が出る」(by達川光男さん)ほどの練習もこなした。力も技も野球への取り組みも全部そろっている。じゃあなぜ今季、栗原陵矢内野手の故障離脱もあって開幕スタメン三塁を勝ち取ったはいいのに、1割に満たない打率で4月4日の試合後に降格を通告されたのだろう。

 答えなんてない。だが処方箋はある。効果があるかないかは分からないが、環境の変化を与えるしかないのだ。三笠GMも、リチャードを溺愛する王貞治球団会長も、それは薄々は分かっていたはずだ。だが大化けの可能性を秘めたロマン砲。

手放すのは非常に…非常に惜しかった。

 23年オフの現役ドラフトで日本ハムに移籍した水谷瞬外野手が、翌年大ブレイク。リチャードは「(触発された?)そういうのもあります」と“うらやましがり”を隠そうともしなかった。昨オフの契約更改交渉で「もちろんホークスで頑張るのが一番なんですけど。誰かのけが待ちっていうのもイヤですし…」と話したが、栗原のけがを転機にすることができないまま、今度は岡本和真内野手のけがで人生が変わった。いや、人生を変えるのはこれからだ。東京で一旗揚げようぜ、リチャード!

 最後に巨人担当の皆さんに業務連絡です。試合後の囲み取材でのトーク、めちゃくちゃ面白いので、うっかり時のたつのを忘れてしまいがちです。締め切り時間には十分注意してくださいね。(2024年ソフトバンク担当・田中 昌宏)

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