◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 今月6、7日に米俳優トム・クルーズ(62)が登壇する映画「ミッション:インポッシブル」シリーズ最新作の来日イベントを取材した。小学生から同シリーズのファンだったこともあり、「一度はこの目で見てみたい」と願ったムービースターだ。

 日本の映画市場は邦画が活況で「邦高洋低」の傾向が定着している。ハリウッドスターの来日が減少する中、親日家のトムの来日は異例の25回目。ジャパンプレミアにまぶしい笑顔で姿を現すと、えも言われぬスター性に思わず他社の記者と「本物だ、かっこいいね」と顔を見合わせてしまった。

 雨が降りしきる中、約3時間ノンストップで「愛する皆さんのために作った映画です」などと呼びかけながら、驚くほど丁寧に、献身的にファンサービスを続けた。退場時にちょうど記者の前で立ち止まり、日本語で「ありがとう」と両手を胸の前で合わせ会釈してくれた。観客、スタッフ、取材陣にも細やかに感謝を伝える心意気に「これが世界で愛されるスターか」と感動し、胸が高鳴った。

 翌日の記者会見でも「スターが出れば映画がヒットするなんてことは絶対ない。今ある環境に感謝し、常に学び続けたい」と熱弁する姿にはっとさせられた。陸海空での超絶アクションを実現すべく、飛行や潜水など専門職並みの技術を習得し続けるたゆまぬ向学心が、一流たるゆえんだと感じた。そして「観客を楽しませるため人生をささげたい」という映画愛と献身が、観客の信頼につながっている。

 新聞記者も読者がいてこそ成り立つ仕事。自己満足ではなく、読者が知りたいことに資するため、懸命に試行錯誤する大切さを、トムの姿勢から学んだ。

(芸能担当・奥津 友希乃)

 ◆奥津 友希乃(おくつ・ゆきの) 2019年入社。文化社会部で社会担当を経て、芸能担当。映画や放送などを取材。

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