将棋の第51期岡田美術館杯女流名人戦でタイトルを防衛した福間香奈女流名人(33)=清麗、女流王座、女流王位、倉敷藤花=の就位式(主催=報知新聞社・日本将棋連盟、特別協賛=(株)ユニバーサルエンターテインメント)が22日、都内で行われた。産休明け、8期ぶりのフルセットと“異例づくし”の戦いの末に手にしたタイトルは、自らの成長と同時に周囲の協力あってのものだったと強調した。

 結婚、出産を経て手にした14回目の就位。成長を知る多くの関係者に祝福された福間は「周りの方々の温かさを感じました。日程変更していただいたのもあるので、周りの皆さんに感謝の気持ちが強い」と頭を下げた。

 福間にとっては慣れ親しんだタイトルも、今回ばかりはいつもと勝手が違った。産休を取得し昨年12月に長男を出産したため、例年1月から行われる五番勝負は、3月に開幕。第1局は対局2日前に家事で右手を負傷した影響で、異例の利き手と逆で指すアクシデントに見舞われた。

 その第1局と地元・島根県出雲市での第2局を連勝したものの、第3、4局は挑戦者の西山朋佳女流三冠(29)に連敗。8期ぶりのフルセットとなった。それでも「意外と自然体で盤上に立つことができたかな。全ての力を発揮して終えられたことは、充実感のあるシリーズとなりました」と振り返った。

 00年シドニー、04年アテネ五輪柔道女子48キロ級金メダルの谷亮子さんの“名言”になぞらえ、戴冠(たいかん)時には「(旧姓の)里見で女流名人」、「福間で女流名人」に続き「ママでも女流名人」と紹介されたが、「反響があった」という。「大きく取り上げていただきまして、各方面からお祝いを頂きました」と笑みを浮かべた。

 初めて女流名人位に就いてから16年。福間は女子高生から母親になり、周囲の環境も変わった。だが、このタイトルへの思いは変わらない。「高校で初めてタイトルを取った時から見てくださっている方がいる。ここで対局できることが一つのモチベーション。皆さまには親目線で見守っていただいて、女流名人戦と心身共に成長させていただいている気がします」と話すと、「番勝負に万全な状態で臨めるように、今から準備していきたい」。早くも来年の戦いを見据えた。(中西 珠友)

 ◆母・里見治美「両立頑張って」

 娘の晴れ姿を会場で見守った母・里見治美さんは袖の短い留袖の着物を着用した福間に「母になったんだなという感じがする」と感慨深げ。「育児と将棋との両立で大変だと思うけど、家族と協力して頑張ってほしい」とエールを送った。

 福間は五番勝負後に実家へ里帰り。父・彰さんはその時に初めて孫と念願の初対面を果たしたという。治美さんは「(彰さんは)うれしそうでした」と明かした。

 その長男は生後5か月に。最近は育児にも少しずつ慣れ、産休明けの過密スケジュールも落ち着いてきた。福間は「寝返りを打つようになって、ベビーベッドの中を動くようになった」と成長を感じている様子だった。

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