◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 昨季91敗からの逆襲を期す西武で「勝利の方程式」の一角を担う若武者がいる。プロ3年目右腕の山田陽翔(はると)。

滋賀・近江では甲子園に春夏合わせて3度出場し、通算11勝を挙げた。エースで4番打者で満塁弾…。私も聖地で躍動する姿に、テレビ越しに胸を打たれた一人だ。

 4月のある遠征日。試合後の街中で、プロ4年目左腕・菅井とともにクレープをほおばっていた山田に遭遇した。「僕はイチゴとバナナのクレープを食べていて、菅井さんはぱりぱりチョコみたいなやつ」。お酒には弱く、甘い物好き。素顔はどこにでもいる21歳だ。

 今季は開幕1軍入りこそ逃したが、開幕2日目に1軍昇格を果たすと、左足を上げずマウンドの傾斜に沿って踏み出す独特なフォームで4月3日・楽天戦での1軍デビューから安定した投球を続けてきた。5月17日のオリックス戦では念願のプロ初白星も手にした。

 昨季まで1軍登板はなし。覚醒の要因を本人に尋ねると、「平良(海馬)さんとの自主トレでやってきたことがしっかり出せている」と胸を張る。

「野球の技術だけじゃなくて、栄養とかメンタル、睡眠、解剖学とか」。見聞きする全てが新鮮だった。

 ファームの監督時代から見続けている西口文也監督は「まぐれや」と笑いながらも、「ストライクゾーンの中でしっかりボールを動かしている。無駄な四球が前より減って、バッターと勝負できているのが一番大きい」と成長ぶりを称賛。「結果を出しているから、実力で」と、勝ちパターンとして送り出している。

 甲子園のヒーローからプロ野球界のスターへ。山田陽翔の第2章が幕を開けた。(西武担当・大中 彩未)

 ◆大中 彩未(おおなか・あみ) 2024年入社。遠征ではできるだけご当地グルメを食べに行く。

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