女優・麻乃佳世は宝塚歌劇団時代、月組トップ娘役だった。91~95年、入団前から憧れ、芸名に「世」を反映させた涼風真世、天海祐希とトップスター2人の相手役を務めた。

 7月は東京・明治座「五木ひろし特別公演」(5~27日)の第1部、時代劇「花のお江戸の快男児『喧嘩安兵衛』」に出演。太川陽介ふんする清水一学の妹・妙を演じる。五木座長の作品には過去にも出演歴があり「チームワークが素晴らしい。今回は坂本冬美さんともご一緒できるのが楽しみです」と話す。

 麻乃にとって明治座は特別な場所だ。「子どものとき、ここを通って(中央区立)久松小学校まで通っていたので。俳優さんのカラフルなのぼり旗を見て感動したり。懐かしいですね」。明治座出演は初めてではないが、そんな懐かしさをよみがえらせてくれる劇場の舞台に立てる喜びをかみ締める。

 95年に宝塚を卒業して30年になる。在団中は芝居、歌、踊りとバランスの取れた娘役として知られた。「やっぱり舞台が好きであることに、変わりはないですね」と演劇中心に堅実な女優活動を続けてきた。

 宝塚は男役を軸に動いているため、娘役は献身的な「男役さんを立てる」イメージが強い。そのため、退団後も芸能活動を続ける元娘役の中には、無意識に抑制してしまうなど表現面で悩む者も実際、少なくない。その点、麻乃の考えは興味深い。「私の場合、マイナスよりメリットしかないと思います」といい、「舞台上での立ち位置や共演者との芝居など、必要とされる空気を読む力が、自分自身を客観的に見つめる感覚も養ってくれた。娘役だからこそ得られた経験は、宝物のようで、計り知れません」と説得力ある言葉だった。(内野 小百美)

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