TBS系「水曜日のダウンタウン」(水曜・後10時)のドッキリ企画で話題のひょうろく(37)が、8日からNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(日曜・後8時)に出演し、注目を浴びている。もともとはお笑い芸人。

俳優歴4年でつかんだ大河ドラマの撮影、転機となった“恩人”への感謝を語った。(中西 珠友)

 大河ドラマへの出演はマネジャーからのLINEで知り、「えーってなった」。喜びもつかの間、これまで「水ダウ」で数多くのドッキリにかかってきただけに、ドッキリも疑っていた。疑惑が晴れたのは、撮影現場に到着してから。ひょうろくの目の前に田沼意次役の渡辺謙(65)がいた。「渡辺謙さんが僕のために動くことはない」とようやく出演を確信したという。

 初の時代劇は「難しかった」と振り返る。演じた松前廣年は江戸時代の家老(藩の最高位)。「37年間平民を生きてきたので、上の人の立場が分からなくて…。しぐさですごい悩んだ」とジョーク交じりに回想。役づくりのため「たやすくひれ伏さないというか。へりくだらないことが大事。

ありがとうって思わないようにする」と自分なりの工夫を行った。

 撮影では常に緊張し、「毎回、冷や汗をかいてしまった」。蔦屋重三郎(横浜流星、28)を慕う花魁・誰袖役の福原遥(26)との場面が多く「不慣れでドキドキしないといけないシーンだったけど、本当にドキドキした。廣年が抜けてしまったかも」と素のひょうろくに戻ってしまったことも。特に手を握られたシーンでは「ありがたーいと思っていた」と笑顔で明かした。

 福原だけではなく「べらぼう」では、経験値の豊富な俳優と演技する機会に恵まれた。「皆さんお上手なので、一緒に(お芝居が)できて、すごく勉強になりました」と感謝した。

 一方で「緊張しすぎて、まばたきが止められなかった」と反省。まばたきは、演技中も自然体にするものだと思っていた。しかし監督からは注意を受けた。本番も修正できず、完成した作品を見ると「皆さん、(演技中に)まばたきを全然していない。それって普通なんだ」と痛感。

新たな経験を経て「(芝居を)やっていると気づかない、細かいことを心がけていることが多い」と新しい発見もあった。さっそく「まばたきしない練習」にいそしんでいる。

 ひょうろくは高校を卒業して、建設会社に入社。高校の同級生に誘われ、2012年に仕事を辞め、芸能界入り。お笑いコンビ「ジュウジマル」を結成し、19年のM―1で3回戦に進むなどした翌年、相方の都合で解散することに。一人で活動しようにも「ネタが作れなくて…。活動しようがなくなった」。

 お笑いタレントとしての活動の場を失い、飲食店でのアルバイト中に見たYouTubeが、人生の転機となった。20年4月、お笑いコンビ「さらば青春の光」のチャンネルで行われていた「30分事務所ピンポンチャレンジ」に参加。今や“恩人”とも言える「さらば青春の光」の2人と初対面した。その後、動画に出演するなど親交が深まった。

 「さらば―」の森田哲矢が22年3月放送の水ダウで自身の説「リアルに『へー!』って言わせるの難しい説」の仕掛け人としてひょうろくを連れて行くと、視聴者の間で不思議で素直な言動が話題に。

同時に演技力も目に留まり、タレント、俳優業を本格的に始動するきっかけとなった。現在は「水ダウ」だけでなくバラエティー番組、数多くのCM、ミュージックビデオにも出演している。

 「べらぼう」の出演は恩人2人へのプレゼントにもなった。出演が決まったことを伝えると「『なんでやー』『なんでおまえやー』と言われた。僕以上に驚いてくださって、喜んでくださった」と笑顔。「(アルバイト以外の仕事が)何もない時にずっと誘ってくださった方。僕が何かしたというよりは、一人きりじゃ何もできないし、面白く扱ってくださっている、さらばさんに助けていただいている」と頭を下げた。その上で「僕の名前が少しでも出れば、それが恩返しになるかな。一生懸命、頑張りたい」と、さらなる活躍も誓った。

 俳優としては22年にデビューし、今年4月放送のBS日テレ「コンシェルジュの水戸倉さん」でドラマ初主演。その2か月後に「べらぼう」が放送されると、地元・鹿児島に住む親戚から大きな反響があった。「僕が思っているより、すごいものに出させていただいているんだな」と事の大きさを少しずつかみ締めている。

 あっという間に、多くの人に名前が知られるようになった。現在のブレイクぶりを「どこか分かっていないというか、ちゃんと客観視できていない。気づいたら…」とあまり実感はない様子。要因についても「よく聞かれるけど、僕に聞かれても…。一生懸命、生きてきただけ」と首をかしげた。

 今後の目標は「あんまり(具体的なことは)なくて、いただいた仕事を一生懸命に頑張る」。俳優としては「有名なやつに出たいというより、楽しんでもらえる一部になりたい。これ面白かったなーというところに、一要素としていられたら」と具体的なジャンル、役柄は明言しなかった。一方で「死体役でもいい」と何でも引き受ける姿勢も見せていた。

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