オリックス・岸田護監督(44)がスポーツ報知の単独インタビューに応え、27日の楽天戦(京セラD)から再開するリーグ戦への決意を明かした。3連覇を果たした中嶋聡前監督(56)からバトンを受けたここまでの歩みを「苦」と表現。

貯金8の2位でも「手応えはない」と堅実に白星を積み重ねる構えだ。5位に沈んだ昨年の課題だった打撃も向上させ、チーム打率は12球団トップの2割6分2厘。選手ファーストの采配を貫く12球団最年少監督は覇権奪回に加え、1軍復帰を目指す盟友の平野佳寿投手(41)にも熱いメッセージを送った。(取材、構成・長田 亨)

 ―新監督として開幕し、3か月が過ぎた。監督の仕事を一文字で表すと。

 「難しいですね。にがい。苦、ですかね…」

 ―苦労、苦難、苦悩。いろいろな「苦」がある。

 「その試合を勝っても、次の日も勝つかは分からない。確定がないことの繰り返しですから。選手のメンタルを考え、状態を良くするための苦悩もあります」

 ―オープン戦は最下位だった。

 「僕以外の全員が、大コケすると思ったはずです。オープン戦は今まで頑張ってきた選手たちの復活を願って、おのおの準備をしてもらいました。試合に負けると面白くないですけど、準備はできていました」

 ―苦しみながらも貯金8。

 「順位表を見れば、8個の貯金はあってないようなものです。4位まで1ゲーム差ですからね。本当に、どう転ぶか分かりません」

 ―とはいえ、ここまで一度も勝率5割を下回っていない。手応えはある。

 「全くないです」

 ―手応えがあっても、口にしないのでは。

 「手応えがある、と言うのはウソだと思います。貯金が50ぐらいあれば別かもしれないですけど…。何となく計算は立っても、絶対に大丈夫というものはありません。どのチームも怖い中でやっているはずです」

 ―怖いと言う中で、大事にしていることは。

 「チームや選手の健康状態を保つことです。活躍して勝つんだ、という選手の気持ちを、どれだけサポートできるか。今現在の打線で言うと『何で、できなかったの?』と選手任せにならないように。極端に言えば、追い込まれるまでは、自分の好きなコースをカーンと打っていい。見えない貢献ができる選手たちですし、各コーチも一生懸命、考えてくれています」

 ―開幕1、2試合目を除けば、ほぼ日替わりのオーダー。最も固定されたのが4番・杉本の41試合だ。

 「僕も投手出身なので、怖いのは一発。ラオウには一発の怖さがあります。走者がいる時の攻撃を考えれば3、4、5、6、7番ぐらいまでを見ています」

 ―3~7番までがクリーンアップという考え方。

 「OPS(出塁率+長打率)は重視しています。1、2番は出塁率や足、打球方向も見ます。ロング(長打)で大きく走者を返せる選手が中軸。

最近で言えば、1番の龍馬(西川)はリーグで最も二塁打(18本)が多くて、足もある。2番の宗は何でもできる。2人で1点、という可能性もあるわけです」

 ―投手、野手ともに故障者が多かった。

 「意外と出てしまったなという感じですね。広岡にしても、プレー中のけがは仕方ない。痛いのは痛いんですけど、カバーする選手が出てきている。宗なんて目つきが違いましたから」

 ―ファームでは山下や平野が復帰を目指している。

 「舜平大(山下)は腰のリハビリをしながら、治って試合で投げられる→抑える→推薦が来る。他の選手と同じ流れです。平野の場合は違います。当然、一緒にはできません」

 ―貴重な戦力として。

 「もちろんです。

『ここ、出し切るぞ』というところで上がってもらいます。シーズン後半、しんどいところじゃないでしょうか。オリックスの一番の顔であり、精神的支柱ですから」

 ―空気を変えられる選手。

 「僕がプロ3年目の08年、清原和博さんが夏場にけがから復帰しました。ベンチにおられるだけで『野球の鬼がいる』という空気感が出ていました。特に若い選手たちが『俺たちは強くなった』という気にもなります。平野にもその可能性があると思っています」

 ―残り76試合。どう戦うか。

 「思い描くのは、もちろん優勝です。でも、計算して勝てるほど甘くない。1つの試合を確実に取っていく姿勢しかないです。勝ち負けで大きい野球になることも、小さい野球になることもあります。

それらをすべて受け入れてやっていくしかないです。仲良しこよしは必要ありません。能力も努力も兼ね備え、男らしく、格好いい集団になってほしいです。1、2軍を合わせた全員が、最高の戦力だと思っていますから」

 ◆岸田 護(きしだ・まもる)1981年5月10日、大阪・吹田市生まれ。44歳。履正社、東北福祉大、NTT西日本を経て、2005年大学生・社会人ドラフト3巡目でオリックス入団。09年に自己最多の10勝、11年に同33セーブを挙げるなど、通算433試合で44勝30敗63セーブ、63ホールド、防御率2・99。19年限りで引退し、20年から2軍投手コーチなどを務めた。座右の銘は「日々新たに」。右投右打。

 【取材後記】

 岸田監督は少し自分を責めるようにつぶやいた。ここまで3勝にとどまっている宮城の話題を振った時だ。

「エース、エースって言いすぎたかな…」。昨年11月に12球団最速で開幕投手に指名。背負わせすぎたのか?と質問をかぶせた。

 「背負えるような男気のある選手は、苦しくても、失敗しても格好いいですから。宮城もそうであってほしい」。エースナンバーの背番号「18」で結ばれた先輩、後輩の関係。「レベルが高いからこその悩みがあると思います」と、左腕を思いやった。

 監督生活を「苦」と表現した。午前0時に就寝しても4、5時間後には目が覚める。気分転換に続けているのが朝のランニング。「きょうの試合、どうしようか」と、頭に浮かぶのは野球のことばかりだ。尊敬する西武・西口監督からは「飴にせえ」と冗談っぽくイジられたというが、脳を活性化させるための重要なアイテムとしてガムをかんでいることも聞いた。オリックスに関わる全員に期待されるV奪回。信じる道を行ってもらいたい。(オリックス担当・長田 亨)

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