◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 担当するJ2札幌に深井一希という選手がいる。下部組織出身でポジションはボランチ。

30歳のプロ13年目になるが、リーグ戦出場は205試合と決して多くない。両膝の手術は計5度と、ピッチ外で過ごす時間が長いからだ。

 2011年のU―17W杯に主力で8強入りに貢献。2年後にプロ入りするも1年目で1度目の左膝手術。以後、復帰と離脱を繰り返してきた。ピッチに立てない間は「クビになった感じ」と絶望感も味わってきた。「周りはどんなふうに見てるのだろう」と悩みもした。ただ、プレーができなくても、チームへの貢献は大きい。

 負傷明けの選手は「一希の姿を見ていたら、泣き言は言っていられない」と口をそろえる。21日の藤枝戦で左膝前十字じん帯断裂などから566日ぶりに復帰したGK高木駿は「膝の神がいたのは大きかった」と真横で戦う深井の姿に支えられ、リハビリを乗り越えた。4月に深井が実戦復帰を果たした際には、岩政大樹監督がインタビューで感極まったほどだ。

 ただ現在は、再び苦しい闘いが続いている。

4月25日の出場後、戦列から離れた。膝の痛みで階段の上り下りもままならない。痛み止めは欠かせず「1メニュー、1メニューをこなせるか」という状態。練習途中で引き揚げる日も増えた。「正直、サッカーをやれる足じゃない」と漏らす中でも、毎日ピッチに立つ理由はただ一つ。「コツコツやっていればご褒美じゃないけど、いい時期が来るんですよね。その時は負けない自信があるから」。もう一度戦いの場へ。その時に彼の思いを最大限伝えられるよう、日々の取材を続けていきたい。(サッカー担当・砂田 秀人)

 ◆砂田 秀人(すなだ・ひでと) 2020年入社。前職を含め、現担当は通算10年余り。

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