サッカーJ1リーグは第19節で前半戦を終え、9季ぶりの優勝を目指す鹿島が首位での折り返しを決めた。スポーツ報知では、前半戦のMVPに鹿島の守護神として神セーブを連発したGK早川友基(26)を選出。
強い鹿島の復活を印象づける前半戦となった。鬼木達監督(51)の就任1年目、発展途上のはずのチームは勝ち点を順当に積み上げ、首位ターンに成功した。
全試合にフルタイム出場し、常に最後尾からチームを支えてきた早川の目に、鹿島の変化はどう映っていたのか。
「シンプルに、みんなうまくなったな、と思います。ちょっと上から目線ですけど(笑)。まだまだ課題もありますが、どういうサッカーをしたいのか、見ている人に伝わる試合ができているなと感じています」
新指揮官就任以降、技術向上に励んできた成果が徐々に出始めたことは、チームに充実感をもたらしている。前半戦13勝のうち、9勝が1点差での勝利。しぶとく勝ち星を積み重ねてきた。
「鬼さん(鬼木監督)は勝つことしか考えてない。勝つためにどうしなきゃいけないのかを逆算し、常に考えている人。スタメンとかサブとかではなく、チーム全体で、みんなで意識高く練習に取り組めています」
「GKで勝った」試合が多いのも、今季の鹿島の特長の一つだ。
チームを救うスーパーセーブ連発の要因には、23、24年の2季連続フルタイム出場で得た「余裕」、そして最適のプレーを瞬時に出す「判断力」向上を挙げる。
「余裕が出てきました。自分のミスで負けたり、自分が止めて勝ったり…。試合に出続けることで、いろいろなことを経験し、余裕が出てきました。今までだったら、1―0で勝ってたら『試合を終わらせにいこう』の一択だったけど、今は『ボールが来たらこうすべき』と頭が整理されています。チームの戦い方が統一されていることで、最適なプレーが出しやすくなっている側面もありますね」
森保監督高評価「目指すべき場所」 日本代表入りを推す声も多い。森保一監督(56)も「非常にいいパフォーマンスで首位のチームを支えている。好セーブという部分でも攻撃の起点になる部分でも、非常にいい」と高評価。A代表デビューは野望ではなく、現実的な目標だ。
「『日本のGKと言えば早川だよな』って。
鹿島で守護神として活躍し、チームを勝利に導き続けることが、A代表に近づくと信じている。「『Jリーグでこれだけで結果を残している』っていうことを、証明し続けることが重要」と大きくうなずく。
自分たちは挑戦者試合に勝ち続ける 鹿島は「追われる立場」として、後半戦を迎えている。2位の柏を筆頭に、3位以下にも広島や神戸など、力のあるチームが“打倒・鹿島”に燃えている。
「自分たちは本当にチャレンジャー。目の前の試合を勝ち続けることが、他クラブにとってプレッシャーになる。周りの声や順位、ライバルクラブの結果に左右されず、自分たちを信じてやり続けるだけですね」
仲間のためにも、という思いも強い。DF安西幸輝(30)、DF関川郁万(24)、FW師岡柊生(24)の主力3人が、今季絶望級の大けがでチームを離れている。
「離脱してしまった選手たちのチームへの貢献度は、正直かなり高いものがありました。その選手たちに、最後、優勝のシャーレを掲げさせてあげたいなっていう思いは、自分だけじゃなく、絶対にみんなあります」
鹿島の守護神として。
【取材後記】
インタビュー実施日の10日ほど前、早川の母校・明大を訪れた時のこと。別件の取材中に「早川さんが…」という話題が2回出た。
来季鹿島加入内定のMF林晴己(4年)の取材中、林が「早川さんが優しくしてくれました」と。鹿島の練習に参加した際、早川は緊張を和らげるべく積極的に話しかけてくれたという。
さらに林の取材に前後して、鹿島ユースから明大に進んだGK高橋楓(4年)と話す機会があった際も「早川さんがいろいろ動いてくれたんです」と。聞けば、早川が明大側に掛け合い、高橋を紹介したという。
鹿島の番記者としては、この2つのエピソードを聞いても、何の驚きもなかった。早川友基とはそういう男、というか。
人間性もGKとしての技術も、本当に素晴らしい。「今、日本のトップは(鈴木)彩艶選手。