◆明治安田J2リーグ▽第21節 札幌3―2熊本(28日・大和ハウスプレミストドーム)
熊本戦は今季一番と評しても過言ではない内容だった。試合の入りから良かったし、得点シーンで見られた集中力やクオリティーを出していければ、相手はどこから攻めてくるか分からなくなる。
勝利の原動力となった高嶺とマリオには共通点がある。最後の判断のところで“力を抜ける”のだ。高嶺は初めて右サイドバック(SB)に入ったが、カットインした時に利き足の左で触れる状況でも右から抜くと見せかけたり、その雰囲気を最後まで出さない。シュートと思わせて切り返したり、ギリギリで判断を変えられるのは力が抜けている証拠。よく「ゴールに近づくほど冷静に」と言われるが、それを体現できるから素晴らしい得点が決められる。J2では別次元の選手だと改めて感じた。
日本での初ゴールとなったマリオの左ボレーシュートも同様。力を抜いて合わせるだけの状態にしていたから決まったが、足を思い切り振り抜いていたら入っていなかっただろう。落ち着きに加えて体の強さは申し分なく、相手にとって間違いなく怖い存在になってくる。終始試合をつくった青木や、守備だけでなくかわして運んでつなぐなど攻撃でも貢献した左SBの朴など、余裕を持ってプレーできる選手が増えてきたのは大きなプラスといえる。
個々の奮闘はもちろん、チームとして勝利に結びついたのは簡単なボールロストが少なかったから。上に行くためには最低条件。こだわってやっていけば、より質の高い試合ができる。(吉原 宏太、1996~99年札幌FW)