◆全国高校野球選手権・南北海道大会 ▽決勝 北海7―0札幌日大(20日・エスコン)

 北海が7―0で札幌日大を下し、全国最多を更新する2年ぶり41度目の全国高校野球選手権大会(8月5日から18日間・甲子園)出場を決めた。昨夏コールド負けを経験した左腕・浅水結翔(あさみず・ゆいと、3年)が、今夏公式戦初先発で9回3安打完封。

打線も6番・佐竹徠都(らいと)中堅手(2年)が低反発バット導入後エスコン第1号となる満塁弾を放つなど5回に一挙6点を奪い、南北海道の頂点まで駆け上がった。

 1年前、涙を拭った腕を天高く突き上げた。9回2死。決め球のスライダーで三振を奪った北海・浅水は力強く握った左拳をマウンドで掲げ、チームメートと歓喜の輪をつくった。強力札幌日大打線に対し、9回3安打無失点。大一番で公式戦初完封をやってのけ、「正直完封できるとは。思っていたよりもいいピッチングができて良かった」と破顔した。

 今夏は準決勝まで4試合に登板し、すべて救援。守護神として投手陣を支えてきたが、平川敦監督(54)は「最後は3年生。最後を託せるのは浅水」と先発に抜てきした。左腕は「想定外だった」と起用に驚きながらも、巧みな投球術で二塁すら踏ませない圧巻の投球。役割を全うしたエースに対し、指揮官は「(うれしい誤算?)そうですね。

よく投げてくれた」と褒めたたえた。

 2度の敗戦が左腕を大きく成長させた。今夏と同じく「1」を背負った昨夏。南大会1回戦札幌光星戦で先発したが、3回途中5失点で降板し「先輩たちの夏を終わらせてしまった」。コールドで敗れ、昨秋も決勝で東海大札幌に敗戦。惜しくもセンバツ出場を逃していた。

 その悔しさを胸に刻んで過ごしたオフ。体力強化のトレーニングではすべてのメニューにおいて「1番」を目指した。例年より多い週6回の筋トレでは、ベンチプレス110キロ、スクワット240キロ、デッドリフト200キロまで最大値がアップ。167センチ、72キロと小柄ながら、3種目の合計でチームトップの数値をたたき出すまでに成長し、「長いようで短かったけど、どの学校よりも頑張ってきた。それがこの結果」と1年後の歓喜につなげた。

 エースとしてだけではなく、兄としても負けられない試合だった。

妹・梨来投手が4月、昨季2年連続春夏日本一を達成した神戸弘陵に入学し、早くも主力として活躍。全国高校女子硬式野球選手権の決勝(8月2日)は甲子園開催のため、兄妹そろっての“甲子園出場”のチャンスは今年が最初で最後。妹からの「結翔、行くしかないぞ甲子園」という激励に応え、「絶対に勝って決勝まで来てくれると信じている。まずは兄として決められて良かった」と胸をなで下ろした。

 2年ぶりに臨む夏の大舞台。浅水にとっては、登板機会がなかった24年センバツ以来の聖地だ。「日本で一番長い夏にしたい。まずは一戦必勝」。スター選手不在の“雑草軍団”を支える小さな巨人が、甲子園でも北海の伝統「堅守」を支えていく。(島山 知房)

 〇…札幌日大のプロ注目右腕・窪田が先発し、最速148キロの真っすぐを軸に4回まで好投したが、5回に捕まり5回途中6安打5失点。「今までにないほど硬いマウンドで、今まで感じたことがない疲労だったり張り感があった」と明かした。今後については「甲子園に行くつもりで考えてたんで、まだどうなるか分からないですけど、自分はプロに行きたいと思ってやってきた。

しっかり話し合って決めたい」と将来を見据えた。

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