◆明治安田J1リーグ▽第24節 鹿島3―2柏(20日・メルスタ)
鹿島は柏に3―2で競り勝ち2位に浮上した。2―2で迎えた後半ATにMF松村優太が劇的な勝ち越し点を挙げた。
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必然とは言えないが、偶然でもなかった。古賀太陽がキックをミスしてから走り出したのではない。古賀がファーストタッチを弾ませた時点で、松村はGK方向へ加速していた。
突如、足元にボールが届いたが、松村は冷静だった。1タッチ目で止め、2タッチ目でGKをかわし、3タッチ目でシュート。3万超えのスタジアムが沸いた。
ボールロストから2失点目を与えたことに、責任を感じていた。「このまま終われないと思っていた。試合を壊してしまったことは反省しなければいけないが、ああいう形で勝ちを持ってこれたことは良かった」。リーグ戦のゴールは2シーズンぶりだった。
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同学年の大卒選手がプロ入りし、勝負の1年と位置づけたはずの昨季、鹿島での出場時間はわずか104分。パリ五輪代表への選出も期待されており、U―23代表の大岩剛監督からの評価は高かったと聞く。
7月、出場機会を求めて東京Vへ期限付き移籍。しかし加入直後に3試合連続で先発して以降、途中出場がメインに。12試合出場0得点で半年間を終えた。
鹿島に戻るか、あるいは放出という形になるか。チーム編成作業において、鬼木達監督は松村の復帰を強く希望したという。
他クラブからの触手は当然あり、チャヴリッチの完全移籍加入にメドが立ち、松村不在の間に師岡柊生は独り立ちした。それでも鬼木監督は、松村の可能性を信じていた。本人、クラブ、監督、3者の考えは一致し、鹿島復帰が決まった。
途中出場が中心だが、今季は全試合に出場している。植田直通、早川友基、鈴木優磨、そして松村。24試合出場は既にキャリアハイを更新している。
なかなか数字がついてこなかったが、23節川崎戦でのアシストに続き、柏戦のゴールで2試合続けて目に見える結果を残した。
鬼木監督は「数字の部分で苦しんでいた選手の1人。数字は気になっていたと思う。満員のスタジアムで結果を出せたことを自信にしてほしい」とうなずいた。
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松村は「いろいろと紙一重で試行錯誤しながらだが、優勝戦線に向けてもチームにとっても大きな1点だったと思う」と力を込めた。
ボールを持って前を向いた時のスタジアムの期待感は、チーム一。大一番で勝利をもたらしたゴールにより、さらに熱は上がるだろう。9季ぶりの優勝に欠かせないピースは、鹿島のために加速を続ける。(岡島 智哉)