◆大相撲 ▽名古屋場所千秋楽(27日、IGアリーナ)
東前頭15枚目・琴勝峰(25)が、13勝2敗で初優勝を果たし、IGアリーナ初代覇者として歴史に名を刻んだ。3敗の東前頭筆頭・安青錦(21)=安治川=を突き落として、昨年春場所の尊富士以来となる史上38回目(37人目)の平幕優勝。
新会場の大歓声が心地よかった。初優勝を決めた瞬間、琴勝峰はグッと唇をかみ締めた。単独トップで迎えた安青錦との一番。「肩の力を抜いて思い切っていった」。立ち合いで力強く踏み込み、右を浅く差した。前に圧力をかけ続けて、頭を下げた相手を左からいなし、突き落とした。直後の支度部屋では表情を変えず「感情が追い付いていない。うれしかったが実感はまだ湧いていない。15日間相撲を取り切ることができて、ホッとした」と普段通り淡々と答えた。
歴史に名を刻んだ。
旗手を務めた兄弟子の琴桜は2学年上で、千葉・柏相撲少年団から知る間柄。19年夏場所後には琴桜(当時は琴ノ若)が一足先に新十両昇進。幕下だった琴勝峰(当時は琴手計)は部屋の上がり座敷の片隅から、会見をじっと見つめ、「次は僕の番」と宣言。2場所後に自身も関取の座を射止めた。兄弟子について「刺激になる。大きい存在」。大関との稽古で火花を散らし、成長につなげてきた。
埼玉栄高で豪栄道、貴景勝、琴桜と後の3人の大関を指導した山田道紀監督(59)は「琴勝峰はものが違う。同学年の王鵬や栃大海をしのぐ素質があった。埼玉栄高でも歴代トップクラスだ」と断言する。
20歳で関取となってから、度重なる負傷で2度の十両転落も経験。復活を目指していた23年6月に妻・珠奈(じゅな)さん(25)と結婚。同10月には第1子の長男・寿冨(ひさと)くんが誕生し、力をくれた。勝利の夜は妻子とテレビ通話。千秋楽に駆け付けた家族に「癒やしになる」と感謝した。
師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)は「将来は琴桜と2人で東西の横綱にさせたい」と期待を込めた。琴勝峰も初優勝を弾みに「三役、その先を見据えたい」と口にした。25歳の大器が角界の主役になる。(大西 健太)