女優・吉永小百合が27日、65年の歴史に幕を閉じた東京・丸の内TOEI最終日のグランドフィナーレにサプライズで登壇した。

 吉永は前日、広島で原爆詩の朗読を終えて帰京したばかり。

魂を削る思いで詩を読み、相当な心労が残っていたはずだ。そんなハードスケジュールを分かっている東映は、無理はさせられないと考えていた。しかし本人自ら駆けつけた。そういう性格の人なのだ。

 古巣の日活より長い、俳優生活の半分以上、45年間に15本を超える東映での主演作。サユリストでも知られた東映会長だった故・岡田裕介氏とのタッグによる企画で生まれた。仮にこれらの東映作品がなければ吉永の女優人生は、全く違ったものになっていた。この感謝の気持ちもあっただろう。

 幾度となく丸の内TOEIで吉永を取材した。公開初日が大半。舞台あいさつを通じて主演女優として役を演じるだけでなく、興行面も気に掛け、自身を追い込み、責任を一身に背負う覚悟を見てきた。この日、個人的な感傷に浸らず、映画館で働いた人たちへの慰労、感謝の言葉からも、吉永らしさが表れていた。

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