◆第42回東海S・G3(7月27日、中京競馬場・ダート1400メートル、良)

 第42回東海S・G3(中京)は4番人気のヤマニンウルス(武豊)が復活V。昨夏のプロキオンS以来の重賞2勝目を挙げた。

 強い砂の怪物が復活した。ヤマニンウルスは4コーナー手前から加速すると、直線は独壇場に持ち込んだ。グイグイと後続との差を広げ、影をも踏ませず、3馬身半差の快勝。1年ぶりの白星を祝うように、武豊はゴール手前で右拳を力強く握った。「久しぶりにこの馬のパフォーマンスができて、すごくうれしいです」とユタカスマイルも全開だ。

 横綱相撲だった。発馬を決めて先行集団に取り付くと、早々と2番手を確保。残り300メートル付近で堂々と先頭に立ち、そのまま押し切った。「いい時のこの馬の感じだったので、自信を持って先頭に立ちました。もまれない位置で先行できればと思っていたので、理想のポジションが取れました」とうなずいた鞍上。「すごく上手にエスコートしてくれました」と斉藤崇調教師も手綱さばきを称賛した。

 ギラギラと太陽の輝く季節が似合う。

無傷の5連勝で重賞初制覇を飾った昨年のプロキオンS(小倉・ダート1700メートル)は7月。ダート1700メートルのJRA2歳レコードで駆け、2着馬に4秒3差の大楽勝だった22年の小倉でのデビュー戦も8月だった。

 昨年12月の名古屋大賞典で連勝が止まり、その後は低迷が続いたが、前走後は3か月半の放牧で精神面をリフレッシュ。集中力が持続するようワンターンの1400メートル戦へ距離短縮し、ブリンカーを初着用。「このまま終わってしまったらどうしよう、と思っていたのでホッとしましたね」。胸中を明かしたダービートレーナーが次々と施した“策”も、歯車が再びかみ合う要因となった。

 6日の北九州記念を制した半弟ヤマニンアルリフラに負けじとつかんだ重賞2勝目。次走は未定だが、今後への足がかりになるはずだ。「改めてこの馬は走るなと思いました」とたたえた名手とのコンビで、ダート界の頂点へ。怪物伝説の“第二章”が幕を開けた。(戸田 和彦)

 ◆ヤマニンウルス 父ジャスタウェイ、母ヤマニンパピオネ(父スウェプトオーヴァーボード)。栗東・斉藤崇史厩舎所属の牡5歳。

北海道新冠町・錦岡牧場の生産。通算10戦6勝(うち地方1戦0勝)。総獲得賞金は1億2807万2000円。主な勝ち鞍は24年プロキオンS・G3。馬主は土井肇氏。

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