◆プロボクシング ▽WBA世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 王者アントニオ・バルガス―同級2位・比嘉大吾(7月30日、横浜BUNTAI)

 WBA世界バンタム級2位の比嘉大吾(29)=志成=が、同級王者アントニオ・バルガス(28)=米国=と引き分け、WBC世界フライ級王座に続く2階級制覇と国内最長ブランクとなる7年3か月ぶりの王座返り咲きに、惜しくも届かなかった。

 昨年9月3日にWBO世界バンタム級王者・武居由樹(大橋)に挑戦し、0―3の判定負け。

今年2月24日にはWBA同級王者・堤聖也(角海老宝石)に挑戦し、9回に両者がダウンを奪い合う激闘の末に引き分けた。日本では史上初、世界でも極めて異例の3戦連続での世界挑戦。「三度目の正直という言葉がありますが、二度あることは三度あるという言葉もある。どちらが正解なのか確かめたい」と臨んだ一戦。堤戦に続く引き分けで、またしてもベルトにはあと一歩届かなかった。

 昨年9月に武居に敗れ、一度は引退を決意した。しかし堤との世界戦のオファーが舞い込み、翻意した。ただ堤との激闘の後は、迷いなく現役続行を決めた。「自分からしたらやり切った。チャンピオンになりたくてやったが、別に悔しさもなかった」という一方で「判定を聞いた時の野木さん(野木丈司トレーナー)の顔を見たら、かわいそうだなっていう気持ちになった。自分のためでもあるが、チャンピオンになって恩返ししたいと思った」と11年間コンビを組む恩人のためにも王座返り咲きを誓っていた。

 「三度目の正直」へ向け、過去最長の18ラウンドのスパーリングも敢行。

10分間のインターバルを挟み6ラウンドずつ3人と拳を交えた。野木トレーナーは「これまでは14ラウンドが最高回数だったが、今回はさらに質の高い動きを追求した。少しの休憩を入れることにより最後まで手数をキープできた」とその狙いを明かし、「最後まで集中力もあった」と精神面での成果も語った。60分ぶっ通しのマスボクシング(軽めのスパーリング)も行うなど、心身ともに追い込んだ。

 野木トレーナーも「本当に先があるかないか、2択だと思います」との思いでこの一戦に臨んでいた。「武居戦が決まった時、本当は半年間の練習期間が欲しかったが、2か月しか時間がなかった。武居戦、堤戦を含めた3試合で、当初欲しかった半年の練習期間をクリアすることができた。体力もその前2戦から積み上げができている。精神的にも、状態としても、この3戦で一番いい」と手応えを語っていた。

 WBAバンタム級は、正規王者だった堤聖也(29)=角海老宝石=が比嘉戦後に目の手術を受けたため、5月に休養王者に認定された。6月には5階級制覇王者ノニト・ドネア(42)=フィリピン=が暫定王座を獲得。比嘉が勝っていれば、高校時代からの親友で過去2戦とも引き分けている堤との団体内王座統一戦となることが濃厚だったが、そのプランも棚上げとなった。

 比嘉は「三度目の正直」で結果を出せなかった場合、「4度目はない。負けたらそのまま引退会見をします」と話していた。ただ、またしても世界王者と互角に渡り合い、「負け」はしなかった。今後の決断が注目される。

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