競泳の世界選手権男子200メートル自由形決勝で、初出場の18歳、村佐達也(イトマン東京)が1分44秒54の日本新記録をマーク。3位に入り、2019年大会の松元克央以来となるメダルを獲得した。

今大会、競泳ニッポンのメダル第1号となった男子自由形のホープ。五輪3大会連続メダリストでスポーツ報知評論家の松田丈志氏は、村佐の強化プロセスに日本代表再浮上の可能性を見いだした。

 村佐選手のメダル獲得は、いい意味で予想外だった。決勝前、私は1分45秒前後を予想していたが、1分44秒54と大幅に上回った。これはひとえに、大会前の高地トレーニングの効果が大きいだろう。今回、村佐選手は初めて海外での高地合宿に臨んだが、トレーニング方法を知り尽くした平井伯昌コーチのチームに参加したことが功を奏した。

 合宿地のスペイン・シエラネバダは、高所環境の中でも高い約2300メートル。練習プランの組み立て方など難易度が高い中、経験値のあるチームに参加したことで、充実したトレーニングが積めたのではないか。決勝レースでは、最後の50メートルが上位2番目のタイム。前半は抑え、後半に高地で培った持久力という強みを最大限に発揮できるレースプランを、見事に遂行した。

 かつての日本代表の強みを、取り戻し始めているようにも感じる。村佐選手は、代表期間中に東洋大チームに参加し、所属の垣根を越えて強化を行った。

同大の松下知之選手らと競り合うことで、普段引き出せない力を出せたと思う。近年は、コロナ禍などでチーム活動が制限され、日本全体での強化機会は希薄となっていたが、倉澤利彰競泳委員長のもと、日本代表で動く時間が増えた。トップレベルの選手同士が時間を共にし、コミュニケーションを取ることで、相互理解や信頼関係の構築につながっていく。今回、村佐選手のメダル獲得という結果で、他の選手にとっても強化の一つの指標とすることができるのではないか。いいきっかけとなることを、期待したい。

 日本代表は今大会、選手がスタンド席に来てチームメートを応援する姿が目立つ。主将の池江璃花子選手は初日の競技後、チーム全体の連絡グループで「明日からも、この勢いで頑張っていきましょう」と呼びかけたという。チームのことを考えて動けば、自分自身にもチャンスが巡ってくる。池江選手には、日本代表にいい循環をもたらしてほしい。(北京、ロンドン、リオ五輪3大会連続メダリスト)

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