◇プロボクシングWBA世界ライトフライ級(48・9キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇同級1位・高見亨介(TKO10回2分48秒)王者エリック・ロサ● (30日、横浜BUNTAI)
WBA世界ライトフライ級1位・高見亨介(23)=帝拳=が悲願のタイトル奪取に成功した。チャンピオンのエリック・ロサ(25)=ドミニカ共和国=に挑戦した高見は、序盤からパンチを上下に散らし主導権を握る。
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23歳のニューヒーローが誕生した。チャンピオンベルトを肩からかけ、誇らしげにリングを一周した。「率直にうれしいです。(予告した)6ラウンドKOを逃して『判定でもいいかな』と思い始めて、最後はKOできてびっくりしています」と胸を張った。
圧巻のパフォーマンスだ。序盤から上下にパンチを散らし、2階級制覇王者にプレシャーをかけた。パワーの差にものをいわせ、ボディー打ちでロサを下がらせた。そして10回、右フックをクリーンヒットさせ、初ダウンを奪う。立ち上がった王者に試合は再開したが、ダメージは明らか。スリップ気味のダウンをしたことろでレフェリーが試合を止めた。
ボクシングを始めたのは小学校2年の時だ。当時キックボクシングを習っていた高見だったが、父の友人で協栄ジムマネジャーだった大竹重幸氏(現青木ジムマネジャー)に「ボクシングをやってみれば」という誘いを受けた。大竹氏は父に連れられ高見がジムに初めて訪れた時のことは、今でも鮮明に覚えている。
「サンドバッグを打たせたんですが、すぐにこれは(他の人と)違うと思った。パンチの回転が速く、ナップがきれるんです。ナザロフ(元WBA世界ライト級王者)、鬼塚(元WBA世界スーパーフライ級王者)と同じ音がした」
小学2年生のパンチは、ジムの現役世界王者と同じ音を響かせ、無限の将来性を感じさせた。大竹マネジャーは協栄ジムを辞める時だ。「亨介には将来がある。しっかりしたジムで育ってほしい」と中学1年の終わりに帝拳ジムへの入門を嘆願した。
常にボクシング中心の生活を送った。高校は目黒日大に進学するが、練習を一番に考えて通信制を選んだ。大学生と一緒に朝練を行い、午後からは帝拳ジムで汗を流した。
ボクシング関係者は高見のことを「本物」と評価する。スピード、パワー、メンタルすべてを持ち合わせる次期スター候補と誰もが信じて疑わない。そして多くの世界王者を輩出してきた帝拳ジム・本田明彦会長でさえ「うちの秘密兵器」というほどポテンシャルは高く、その期待通りに世界王者不在だった名門ジムに再び世界のベルトをもたらした。身長166センチとリミット48・9キロ以下のライトフライ級では大柄。将来的に複数階級制覇を目指すことはすでに表明している。高見のボクシングストーリー第1章は完結。まだまだ続く物語は、第2章に突入する。
◇高見 亨介(たかみ・きょうすけ) 2002年4月5日、東京・新宿区生まれ。小学校2年からボクシングを始め目黒日大高でインターハイ、国体優勝。