公式戦では史上初の開催となったスプリント戦は、レース2の予選と各クラスの決勝(50分)が行われた。GT500は、ポールポジションからスタートしたエネオス・ルーキーの福住仁嶺(28)=エネオスXプライムGRスープラ=が優勝。

前日2日の決勝でクラッシュし未明に及ぶ修復をやり遂げアタック。重りのハンデがない“ガチンコ勝負”で、王者auトムスGRスープラの山下健太(30)に0秒728差で競り勝った。GT300は藤井誠暢(44)=Dステーション・バンテージGT3=が練習走行、予選、決勝とすべて1位の完全優勝。チームも連勝を成し遂げた。(観衆5万2300=2日間合計)

 ヘルメットの奥の目が潤んでいた。自分の力だけで50分を走り切るスプリント戦。ポールポジションからの好スタートとなり、途中は2位を走る絶対王者の山下に2秒近い差をつけていた。しかし、周回を重ねるごとに山下のマシンが迫ってくる。残り3分を切ると約1秒の差。福住は「50分は本当に長い。レースとしてはつまらない展開だったかもしれないが、後ろにつかれると精神的にはつらい」と孤独の空間の中で後ろから襲いかかる影と戦っていた。

 前日のレース1決勝でマシンがクラッシュするアクシデントが起きた。

同僚の大嶋和也(38)がスタート直後の1コーナーで他のマシンと接触。正面から壁に突っ込んでフロントを大破した。1日で練習走行、予選、決勝を行うスプリント戦に伴う通常の作業の他に過酷な作業が重なった。それでもチーム一丸となって深夜3時過ぎまでかけてマシンをつくり直した。「チームスタッフに本当に感謝です。なんとか恩返しをしたい」という気持ちが福住の心のエンジンを点火させた。

 成績の良いチームの車体に追加重量が課されるサクセスウェートのルールがない第4戦は、これまで以上にチームの底力とドライバーの技量が求められる。まさに真っ向勝負、重りを載せない王者・auトムスに競り勝つポール・トゥ・ウィンだった。福住も「ガチンコ勝負で1号車に勝てたことは本当に自信になった」とうなずいた。

 スーパーGTは第5戦(23~24日、鈴鹿)から後半戦に突入。総合優勝争いは17・5点を積み上げたauトムスが圧倒的に有利となったが、エネオスには絶対王者を打ち倒したというポイントよりも大きな自信がついた。(今関 達巳)

 ◆TGRチーム・エネオス・ルーキー 2020年からGT500クラスに参戦。

トヨタ自動車の豊田章男会長(69)が創設し、現在もチームオーナーを務める。21年のチーム体制変更でエネオスのブランドカラーに。レース1出場の大嶋和也は初年度の20年から、福住は24年からドライバーを務める。

 ◆サクセスウェート 各マシンに第6戦まではポイントに応じたウェート(重量)が課せられる。例えばポイントが20点の場合は×2の40キロを積むことになる。第7戦はポイント×1で、今季から採用されたスプリントレースの第4戦と最終戦だけは、全車がサクセスウェートがゼロでレースが行われる。

Dステーション大魔神・佐々木総監督連勝 貫禄の2日連続勝利で、Dステーションが連勝を飾った。スタートから50分間、常に先頭を走り、逃げ切り成功。藤井は「プレッシャーもあり、50分は思ったより長かった。ホッとした気持ち」と胸をなで下ろした。スプリント戦とあって、レース全体では抜きつ抜かれつの攻防も繰り広げられたが、Dステーションにとってはどこ吹く風。結果的には、第1コーナーを制した時点で“勝負あり”だった。

佐々木主浩総監督(57)は所用で不在だったが、“大魔神の神通力”もあってか完全Vを達成。藤井は節目の自身通算10勝目を飾った。

 〇…GTアソシエイション(GTA)の坂東正明代表が定例会見で、来年以降の猛暑対策を明らかにした。2日の「レース1」、3日の「レース2」とも決勝直前の気温は30度超え。来年のカレンダーはすでにJAF(日本自動車連盟)に提出済みのため今年同様の日程になる見込み。そのため、スタート時刻を気温の下がる時間帯に移行する薄暮レースやナイトレースの開催も視野に入れているという。

 ◆第4戦の競技概要

 ▽2日「レース1」 GT500、GT300両クラス混走で35周。

 ▽3日「レース2」 GT500、GT300のクラス別で各50分の単走。

 ▽競技方式 両日ともにドライバー交代、タイヤ交換、燃料補給、サクセスウェートなしのスプリント戦で行われた。 

 ▽ポイント(PT) ポールポジション1点が0.5点など、通常の半分を付与。レース1、2で各チーム片方のドライバーが獲得したPTは、もう一方のドライバーにも加算。シリーズのドライバーPTは、同チームのペアが基本的には同数で進む。

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