◆米女子プロゴルフツアー メジャー最終戦 AIG全英女子オープン 最終日(3日、ウェールズ・ロイヤルポースコールGC=6748ヤード、パー72)

 米ツアー本格参戦1年目の山下美夢有(みゆう、24)=花王=が初優勝をメジャーで達成した。首位で出て3バーディー、1ボギーの70で回り、通算11アンダー。

精密ショットを武器に2日目からトップを守り、日本勢では4月のシェブロン選手権の西郷真央(23)=島津製作所=に続き6人目(7度目)のメジャーVを飾った。19年の渋野日向子(26)=サントリー=以来の全英制覇。賞金146万2500ドル(約2億1600万円)を獲得した。

 約30センチのウィニングパットを沈めた山下は両手を突き上げ、うれし涙を流した。メジャー覇者の西郷、古江彩佳らからシャンパンシャワーで祝福され、自身もグビッと祝杯。「最終ホールまで緊張した。あの(最後の)パットを入れて、優勝したという気持ちになった。歴史ある大会でここに立ててうれしい」。表彰式で優勝トロフィーを手に「意外と軽いな」とおどけ、笑顔がはじけた。

 同組の金阿林(韓国)に2番で並ばれても、終盤にチャーリー・ハル(英国)に1打差に迫られても逃げ切った。前半で3つ伸ばし、13番は5メートル、14番も2メートル強を沈めてパーをセーブした。「プレッシャーはあったけど、決めたことを淡々とすると決めていた。

長いパーパットが入ってくれて耐えられた」とかみしめた。

 パワーヒッターがそろう米ツアーで、身長150センチの山下は01年メジャー昇格後の全英女子オープンでも、日本勢のメジャー覇者の中でも最も小柄な優勝となった。平均飛距離は全体69位ながら、パーオン率3位、フェアウェーキープ率は5位と光った。樹木が少なく、海峡の強風が吹く難関リンクスで、6番パー5は1、2打目をアイアンで刻んで攻略。巧みな小技とショット精度でスコアをつくる“我が道”を貫き「そこまで飛距離は求めないコースだと思っていた」と胸を張った。2位に食い込んだ勝は「ショットを一定のリズムで、機械みたいに打っている。そこが強み」と評した。

 幼少期はコーチの父・勝臣さん(50)、弟・勝将(22)と練習し、公園では階段50段を弟と何度も猛ダッシュ。プロ入り後も、25リットルの水入りポリタンクを持ち上げる父考案の独自トレで鍛え上げた。今大会も第3日に74と崩した後、深夜までスイングを修正。父が撮った動画で頭のブレを見つけ、「一番近くで支えてくれた家族が心強い」と感謝した。

 この1試合で、年間女王に輝いた22、23年の国内ツアー1年分に匹敵する2億1600万円を獲得した。

昨夏パリ五輪は1打差4位で表彰台に届かず悔し涙に暮れたが、1年後に歓喜の涙に変えた。今季は同じ米ツアー1年目の竹田、岩井千が次々と優勝。同じ01年生まれの西郷にはメジャー優勝で先を越され「刺激をもらった」と原動力にした。

 史上6人目のメジャー制覇で、米ツアー新人賞ランクは竹田を抜き、首位に浮上した。「コツコツやってきたことで優勝を達成できた」。世界の舞台で、美しい夢をまた一つかなえた。

 〇…6年前に思い描いた光景だった。2019年8月、大阪桐蔭高3年だった山下はテレビにくぎ付けとなった。全英女子オープンで初出場優勝を果たした渋野日向子が歓喜する姿を見て「すごい。将来は自分も海外で戦いたい」と目標を定めた。最初に挑戦したメジャーは22年の全英女子。結果は13位だったが「楽しかった。

この結果は上出来」と手応えをつかみ、快挙につなげた。

 ◆山下美夢有(やました・みゆう)

 ▽生まれとサイズ 2001年8月2日、大阪・寝屋川市出身。24歳。150センチ、52キロ

 ▽名前の由来  母・有貴さんから1字取り、「美しい夢が有る人」と命名

 ▽家族 父・勝臣さん、母、弟・勝将(プロゴルファー)、妹・蘭さん

 ▽ゴルフ歴 5歳から父の影響でゴルフを始める。大阪桐蔭高では17年関西高校選手権で優勝。3年時の19年プロテストに一発合格

 ▽得意クラブ パター

 ▽趣味 カラオケ

 【国内ツアー】

 ▽タイトル 21年KKT杯バンテリンレディスで初V。22年はワールドレディスサロンパスカップでメジャー初優勝など5勝。通算13勝(メジャー3勝)

 ▽年間女王 22年に史上最年少21歳103日で初の年間女王。23年も5勝して2年連続女王

 ▽生涯獲得賞金 7億2624万8484円

 ▽記録 22年に年間平均ストロークが日本勢初の60台(69・9714)をマーク

 【海外ツアー】

 24年パリ五輪は4位。米ツアーは同年12月の最終予選会でトップ通過。本格参戦した今季は、1勝を含むトップ10入り7回

 ◆国内女子ツアーの年間獲得賞金 史上最高額は昨年の年間女王の竹田麗央が記録した2億6573万16円。2年連続女王の山下美夢有は22年が2億3502万967円、23年が2億1355万4215円だった。

日本女子ツアーで最初に2億円を突破したのは15年のイ・ボミ(韓国)で2億3049万7057円。ちなみに、24年全米女子オープンの笹生の優勝賞金は1試合で約3億7680万円だった。

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