◆第107回全国高校野球選手権大会第4日 ▽1回戦 綾羽6―4高知中央=延長10回タイブレーク=(8日・甲子園)

 綾羽(滋賀)と高知中央の一戦は史上最も遅い午後7時49分に開始となり、史上最も遅い午後10時46分に終了が宣告された。10回タイブレークの末、綾羽が初出場初勝利。

夕方の部は“原則として”午後10時を過ぎて新たなイニングに入らず、「継続試合」とすることになっていたが、試合前に両校の了解を得て史上初の継続試合は回避された。

 綾羽が1点を追う9回2死満塁、声援と手拍子だけが聖地に響いた。鳴り物での応援は禁止されている午後10時以降に綾羽が追いつく。開催要項には、夕方の部は午後10時を過ぎて新たなイニングに入らず、「継続試合」とするとあった。9回を終え、場内は「甲子園史上初の継続試合か…」という空気で満たされた。

 だが、大会本部からは試合続行のアナウンスが。ざわめく観衆をよそに両校は10回タイブレークの準備を始め、熱闘の末、綾羽が勝った。深夜に行われた大会本部の会見では“謎”が明かされた。

 第3試合で雨天による1時間7分の中断がなされたこともあり、開始は史上最遅の午後7時49分。継続試合になる可能性もあったため大会本部は、試合前に両校の責任教師から「できれば決着をつけたい」「残り数分を戦うためにもう一度、甲子園に来ることは避けたい」との意向を確認。10回までに限って続行することで合意していた。開催要項には「原則として」の文言が入っており、柔軟な対応をしたという。

 場内の混乱とは対照的に、両校がナイターを楽しんでいたのが救いだ。綾羽の千代(ちしろ)純平監督(36)は9回の攻撃前、ナインに呼びかけた。「甲子園でお月さんを見られるなんて、幸せだぞ」。延長10回は1番からの好打順。4点を挙げた。「月を見上げたら、ツキが向いてきた」と振り返った。8回から救援した藤田陸空は「時間は気にしていなかった。遅いのは全然大丈夫」と笑った。

 日本高野連の井本事務局長は「両校の選手の皆さん、応援団の皆さん、球場で声援を送ってくれた皆さんに感謝を申し上げたい。雨の影響でこの時間になってしまったことは大会後に検証し、次回以降に生かしていかないと」と語った。

 試合終了は午後10時46分。社会常識的に、高校生が午後10時を過ぎてプレーすることは避けるべきだが、今回の継続試合回避は総合的に考え、柔軟な対応だったと評価できる。

甲子園大会は変革の真っただ中。今回の“珍事”も糧に、よりよい環境を目指したい。(加藤 弘士)

編集部おすすめ