◆JERA セ・リーグ DeNA3―4巨人(9日・横浜)

 久しぶりに味わう、しびれる場面だった。同点の7回2死二、三塁。

菊地大稀投手(26)は「勝ちを呼び込めるような投球を」と心を決めた。打席には宮崎。2ボールからのフォークは「あまり落ちなかった」が芯を外して右飛に封じ、グラブをたたいて雄たけびを上げた。直後に味方が勝ち越し、23年8月27日の阪神戦(東京D)以来713日ぶりの通算5勝目をつかんだ。

 23年に1軍で50登板も、24年は1軍登板なし。再び育成契約となった今季は3軍落ちも経験した。課題は守備。精度にばらつきがあった送球を改善すべく、多くの人に練習法などの助言を求めた。3軍首脳陣はより実戦に近い環境での練習機会を提供し、個別練習にも時間を割いてくれた。結果的には「下から投げているような感じ」と腕の位置を下げるフォームに行き着き、「感謝しています。3軍に行って課題に集中して取り組む時間をくださったと思う。できるぞ!ともう一回アピールしていきたい」。

そう胸を張れるだけの時間を過ごすことができた。

 支えがあった。妻や今年2月に生まれた長女の存在はもちろん、父・正博さん、母・美佐子さんにも「毎日、本当に応援されていた」。支配下復帰の決定後、ビデオ通話では美佐子さんが泣きながら喜んでくれた。新潟・佐渡島出身の右腕は「野球を始めた時から支えてもらっている。高校の頃もそうですが、道具面とか遠征費とか…。やっぱり頑張らないとな、って」。約2年ぶりの“吉報”は、両親への恩返しにもなった。

 阿部監督は「大事な場面でもいける経験を持っている。そういう意味で使った」と評価。指揮官の期待に応えた右腕は「妻と娘も家で応援してくれているので、感謝を伝えたい。これから信頼をどんどん勝ち取っていけるように」。

打者をねじ伏せ、歩んできた道が遠回りではなかったと証明する。(小島 和之)

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