部内での暴力事案が判明していた広陵(広島)が10日、兵庫・西宮市内で会見し、第107回全国高校野球選手権大会(甲子園)の出場辞退を発表した。同校の堀正和校長が大会本部に辞退の意向を申し入れ、受理された。

大会期間中の出場辞退は、コロナ感染を理由とした辞退を除くと、春夏通じて史上初。

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 広陵の出場辞退は対処済みの事案が大会中に再燃した点で前代未聞だった。SNSで被害生徒の保護者とされるアカウントの告発が広がったのは大会直前。告発は暴行が「厳重注意」にとどまった不満がにじみ、世間の同情を集めた。高野連は出場に変更はないと声明を出したが、SNSの影響力は強烈だった。

 一般企業においてSNSでの危機管理はスピードが命である。学校側は事態を甘く見てはいなかったか。被害者側への対応に丁寧さを欠いた上で、出場を“強行”したことで、選手たちを好奇の目にさらしてしまい、ダメージを大きくした。

 エネルギーあふれる若者同士がぶつかり合い、仲たがいを起こすことは自然でもある。だが、暴力はいけない。令和の世になっても、指導者と選手の間でも暴力、暴言が繰り返されることが悲しい。

 テレビのバラエティーやYouTubeでは、元プロ野球選手が高校・大学時代の理不尽な上下関係をネタにして、笑いを取っている。

幼稚な、情けない光景である。関係者の間では今でも心のどこかに「野球界はそんなもの」という共通認識がないだろうか。

 そんな時代は終わりにしたい。これを機にプロアマ球界が一丸となって、「ノーモア暴力」のメッセージを発出できないだろうか。絶対に暴力は許されないという、意識改革が必要だ。(編集委員・加藤弘士)

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