現役時代に水谷実雄さんと対戦した掛布雅之さん(70)=スポーツ報知評論家=が10日、故人を悼んだ。

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 水谷さんは内角のさばき方が天才的だった。

腕を柔らかく使って、三塁の守備位置から見ると、バットの出所が分からないほどだった。当時の広島には(山本)浩二さん、衣笠さんのリーグを代表する右打者がいたが、三塁を守っていて水谷さんの打席が一番怖かった。

 内角を引っ張るだけでなく、外の球も右方向に流し打つ技術を持っていた。中距離打者で飛距離では浩二さんに負けても、両サイドの対応という面では水谷さんの方が上だった。だからこそ首位打者のタイトルを獲得できた。

 実は水谷さんの何気ない一言が私の打撃の土台になった。広島戦で3打席連続ホームランを打ち、次の打席は四球で歩いたことがあった。一塁手の水谷さんが「あのホームランは崩れないと打てないよな」と褒めてくれた。フォークボールに対して、泳ぎ気味に体勢を崩してバックスクリーンに運んだことを指していた。その言葉で崩されながら対応するのは間違いではない。むしろ「崩れる勇気」が必要と悟ることができた。間違いなく恩人の一人だ。

(スポーツ報知評論家)

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