第29回全国高校女子野球選手権は2日に甲子園で決勝が行われ、福知山成美(京都)が15安打10得点の猛攻で岐阜第一を下し、11年ぶり2度目の優勝を飾った。2009年の創部から指揮を執る長野恵利子監督(51)が追求してきた女子野球の進化と、率いるチームの復活。

ライバル校・京都外大西の女子硬式野球部1期生として、何度も福知山成美と対戦してきた森脇瑠香記者が「見た」。

 5度目の開催となった甲子園での決勝で、私は“旧敵”福知山成美の復活を目の当たりにした。岐阜第一に先制されるも、同点に追い付いた3回1死二塁、3番DH・松本結愛(3年)の中越え二塁打で勝ち越し。4回は7連続安打など打者一巡の猛攻で5点を奪った。磨いてきた打撃を爆発させて、頂点に返り咲いた。

 男子に比べてパワーで劣り、自然とスモールベースボールになっていた女子野球。だが、福知山成美ナインが聖地の緊張も打ち崩し、「力」で頂点に立った。長野監督は「女子は打球が飛ばないから面白くないと言われてきた。打撃の魅力を示せたし、女子野球のレベルをワンランク上げられた」と手応えを語ってくれた。

 高校時代、練習試合などで何度も戦った。「投手の球は速いし、打者も強いし、嫌な相手やな」といつも思っていた。その頃から福知山成美といえば打撃力だった。

冬場はグラウンドが雪に覆われ練習ができないため、室内練習場では打撃がメイン。どの年代でも長距離砲が必ずクリーンアップにいる。今夏もDH制を生かした攻撃がはまっていた。

 福知山成美は関西初の女子硬式野球部として09年に誕生し、14年夏に全国初優勝。私がいた京都外大西は2回戦敗退だった。翌年の大会パンフレット表紙を飾ったライバル校ナインを見て、悔しかったのを今でも覚えている。当時は20チーム前後だった出場校も、今夏は67チームにまで増加した(地方予選なし)。

 関西の女子野球の基盤を築いてきた長野監督。今回の優勝で満足することなく「もう一度(成美の)名をとどろかせたい」と力を込める。その情熱にはリスペクトしかない。(森脇 瑠香)

 ◆長野 恵利子(ながの・えりこ)1974年6月2日、兵庫県北淡町(現・淡路市)生まれ。51歳。

神戸常盤女子高のソフトボール部を経て大鵬薬品へ。26歳の時に硬式野球へ転向。30歳でクラブチーム「大阪BLESS」のコーチ兼選手となり、のちに監督就任。2000年から日本代表入りし、03年から6年間主将。08年の第3回女子野球W杯で初の世界一に輝く。同年に現役を引退し、09年4月に福知山成美女子硬式野球部の初代監督就任。

 ◆森脇 瑠香(もりわき・るか)1997年10月15日、和歌山県出身。27歳。小学4年からソフトボールを始め、中学では男子とともに硬式野球・橋本シニアでプレー。京都外大西高では3年時に大学、クラブチームも参加する全日本選手権で優勝。和歌山大では準硬式野球部に所属。20年4月、報知新聞入社。

21年からプロ野球担当、24年からサッカーやボクシングなど一般スポーツを担当。

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