◆明治安田J1リーグ▽第25節 東京V1―0横浜FM(9日・味の素スタジアム)

 【東京V担当・後藤亮太】東京Vがホームで横浜FMに1―0で勝利した。

 東京Vの真骨頂をピッチ上で最大限に発揮した。

気迫、気合、覚悟という気持ちの部分と、運動量、球際、切り替えというプレーの両面で、J2降格圏に沈む横浜FMを終始、上回っていた。

 試合後に城福監督が「相手にとにかく合わせるなと言いました。予想ですけど、おそらく相手はスロースタートでくるのではないかなと思っていたので、最初からラインを上げて前からプレッシャーをかけて我々のテンポでやろうというのは、ピッチに送り出す前も確認しました」と振り返ったように、テンポのいいパス回しで相手ゴールに迫り、セットプレーのリスタートも、相手に息つく暇を与えないスピードで行う。守備でもボールを失っても複数人が即時奪回するべく猛プレスをかけ、脅威だった相手両ウィングのヤンマテウス、エウベルを封じた。

 前半12本あったCKで得点を奪えなかった課題は残ったものの、後半開始直後のピンチをしのぐと、後半17分にセットプレーの流れから、MF斎藤の右からのクロスをDF谷口が頭で合わせてゴールをこじ開ける。魂のこもった副主将の今季初得点は見ている人の心を揺さぶった。

 その後も全員が文字通り戦い抜き、大きな勝利を手にした。試合後の総走行距離でも横浜FMの109・203キロに対して、東京Vは117・925キロ。同様にスプリント回数(時速25キロ以上)も110回の相手を大きく上回る146回を計測。上回ったからといって勝敗に直結するわけではないが、「見ている人の心を打つサッカー」と表現される東京Vの神髄が詰まっていた。

 それだけ、この試合に懸ける思いが強かったことは容易に想像できる。リーグ戦の中断期間にDF綱島、MF翁長、FW木村と主力級が移籍し、試合前の時点で16位という状況も相まって、周囲から不安視されることもあった。

さらに、この試合の結果次第ではJ2降格圏内の18位横浜FMに勝ち点差を詰められ、残留争いに巻き込まれるかもしれない大きな分岐点だった。

 ただ、そうした時こそ、チームの本質が見える。試合前に指揮官は「このチームが絶対に失ってはいけないものを、より鮮明にしていかないといけない。僕の同級生(水沼貴史氏)が(解説で)言ってくれてありがたかった、『ヴェルディのサッカーは心を打つ』という、その抽象的な言葉が果たして今年似合うようなチームだったのかと。(リーグ戦が)再開したときに昨年の形とは違う形かもしれないけど、心を打つという所に近づけているようなサッカーをしなければいけないと改めて感じています」と強調していたが、中断期間で準備してきたサッカーを表現。綱島の抜けた3バックの中央はDF深沢が完璧なタスクをこなし、ウィングバックで不可欠な存在だったMF翁長の移籍にも、成長速度を加速させるMF松橋が存在感を放ち、FW木村が抜けた前線にも新加入のFW寺沼、FW平尾が期待感あふれるプレーを披露。誰かに頼るチーム作りではなく、誰もが戦力になるチーム作りを大事にしているからこその勝利。目の前の1試合に全てを注ぎ、勝利を全員でつかみにいく。ヴェルディらしい戦いを示し続け、さらに上を目指していく。

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