◆スペイン1部 1節 バレンシア1―1Rソシエダード(16日・エスタディオ・デ・メスタージャ)

 【バレンシア(スペイン)16日=豊福晋】Rソシエダードの日本代表MF久保建英(24)が、開幕節で今季初ゴールを決めた。バレンシア戦で先発し、0―1の後半15分に同点ゴールを決めた。

4季目のソシエダで3度目の開幕弾。来年6月開幕の北中米W杯を見据える「W杯シーズン」の初陣で結果を残した。現地取材を続ける豊福晋通信員が、久保が繰り出したド派手なガッツポーズの背景を「見た」。オランダ1部では、フェイエノールトのFW上田綺世(26)がエクセルシオール戦で開幕2戦連続ゴールを決めた。

 久保が得点後に見せた、左腕を思い切り突き出す渾身(こんしん)のガッツポーズ。ため込んだ感情を解放した握り拳の背景に、高まるゴールへの意欲があった。

 過去数年にわたり、シーズン2ケタ得点の目標を口にしてきた。加入1年目(22~23年)は9ゴールであと一歩。しかし2年目は7点(23~24年)。昨季も5点。ふがいなさもあったはずだ。「今年は謙虚に」と具体的な目標は口にしないが、自ら倒されて得た直接FKの場面では即座にボールを抱え、キッカーのMFメンデスを寄せつけなかった。

得点への強烈な意思を感じさせた。

 「点を取れてよかった。引き分けで後味はあまりよくないけど、点を取ったのは僕なので。そこはよかった」。得点演出力にも秀でる久保だが、何よりもゴールを最優先に考えている。

 今季も基本ポジションは右サイドだが、フランシスコ新監督はサイドに縛られることなく、この得点場面のように中央に進入することを求める。どれだけ中央に顔を出す回数を増やせるかが、ゴール量産の鍵。「点を決めていなくて他の選手が決め出すと焦りも出てくる。余裕を持って次の試合もプレーできる」。この勢いのまま、序盤戦で数点を積み重ねたいところだ。

 ガッツポーズには、強豪クラブへのステップアップへの思いも隠されていたように感じた。移籍可能期間(31日)まで2週間を切り、大手スポーツ紙がAマドリードへの移籍の可能性を報じている。

 「僕はピッチの上でできることをやるだけ。どうなるかは分からない」。6000万ユーロ(約100億円)とされる高額移籍金も足かせとなっている現状はある。しかし、ソシエダが欧州カップ戦に出場しないこともあり、久保が強豪への移籍を望むのは自然だ。24歳を迎え、むしろステップアップを狙わなければならない段階。ゴール数が、自身のキャリアを切り開くという自覚もある。

 W杯の大舞台が6月に待つ、通称W杯イヤーが始まった。「自信をつけてW杯にいい形で入れるのがベスト。ピークをそこ(W杯)にもっていけたら」。ゴールを重ねることで「久保建英」というブランドを確立させていく。

 ◆久保に聞く

 ―開幕戦でゴール。

 「あまりいい試合じゃなかったので、感触は良くなかったですけど、点が取れてよかった。

去年は逆に、感触がいい試合でも点が取れないことが多かった。こんな感じの試合が続くなら悪くないかな」

 ―得点の場面。右からのカットインから。

 「シュートを打つことは決めていた。細かいタッチを(あえて)ワンタッチでやり、相手DFとGKのタイミングをずらすことができたかなと思っています」

 ―ゴール量産が目標。

 「そうですね。今日も、もう1点取れたと思っています。2点ぐらいは取れたかなと」

 ―毎年、ゴールとアシストで合計20という目標を立てている。

 「頑張りたいですけど、どうなんでしょうね。そこも今年は謙虚に。1試合1試合、頑張っていければいいかなと思います」

 久保のゴールに、スペインメディア取材陣の筆も踊った。サンセバスチャンの地元紙は「この日本人は、ソシエダのベストプレーヤーである。

これまでもだし、これからもだ」と絶賛。昨季に比べて中央でのプレーが増えたことに触れ「ミドルシュートにおいても、彼は危険な選手だ」と高く評価した。

 また大手メディア「アス」は「今季はゴールやアシストが増えるのではないか。そんな期待感がある」と記し、5ゴールと数字上は消化不良に終わった昨季からの成長を期待。「ムンド・デポルティーボ」も「的確なコントロールによる豪快なシュート。久保がソシエダを救った」とたたえた。

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