歌舞伎俳優の松本幸四郎、市川染五郎が22日、都内で歌舞伎座9月公演「秀山祭九月大歌舞伎」(9月2~24日)の「通し狂言 菅原伝授手習鑑」の取材会に出席した。
「筆法伝授」「道明寺」で菅丞相を初役で勤める幸四郎は、数日前に行われたポスター撮影で「扮装(ふんそう)を、自分がまとっていることに、すごいなと思って、涙が止まらなかった。
仁左衛門の楽屋を訪ね、菅丞相について2時間ほど、じっくりと話したという。「菅丞相は格、大きさ、強さがある。ただ情の深い人間ということだけじゃない。すごく強い思いがあるんですけど、にじみ出す役だと思うんです。何かを演じるとか、言葉、動きではなく、自分がどれだけ心を持っているか、感じてもらう。そういう役」。仁左衛門が演じる菅丞相には「菅丞相にしか見えない。それが芸のすごさ」と敬意を表した。
染五郎は「筆法伝授」「寺子屋」の武部源蔵、「車引」の梅王丸をいずれも初役で勤める。史上最年少の20歳で源蔵役を勤めることになり「誰がどう見ても。身に余る大役。最初に聞いた時は、びっくりして間違いだと思いました」と率直な思いを告白。スチール撮影で源蔵の扮装(ふんそう)をした際には「心臓がバクバクするくらい緊張して、背筋が伸びた」と明かし、「今の自分の100%を注ぎ込んで、覚悟を持って勤めて、それが源蔵の覚悟に重なって見えれば」と意欲を見せた。
仁左衛門は祖父と父(11、13代目仁左衛門)にならい、稽古が始まれば千秋楽まで牛肉を食べないという。牛が天神様の使いで菅原道真(菅丞相)が丑年生まれというのが理由だ。幸四郎は「牛の話は知っていました。馬、豚、鶏、鹿とラムチョップくらいにしようかな」と思いを巡らせた。また、「車引」では松本白鸚が藤原時平役で出演し、高麗屋3代がそろい踏みとなる。幸四郎は「幸せなことです。芸を継承している、その瞬間、その現場を、多くの方に見ていただきたい」と呼びかけた。