◆第20回キーンランドカップ・G3(8月24日、札幌・芝1200メートル、良)
サマースプリントシリーズ第5戦、第20回キーンランドC・G3は24日、札幌競馬場で行われ、NHKマイルC1着以来で2番人気のパンジャタワーが外から差し切って完勝。松山弘平騎手(35)=栗東・フリー=は7人目のJRA全10場重賞制覇となった。
外から一気にのみこんだ。5番枠から外へ持ち出し、中団から徐々に位置を押し上げた最後の直線。松山は全身で手綱を押し、左ステッキで闘争心を呼び起こした。ギアを上げるようにスピードに乗ると、最後まで止まらない。2~6着までを占めた先行馬が激しい叩き合いを演じるなか、測ったように先頭に立ち、最後は3/4馬身差をつける。3歳ながら唯一のG1馬が格の違いを見せつけるような完勝だった。
理想と現実が一致した。「外差しが得意な馬で、最後外から差せればなと思っていました。後ろの外めで競馬できましたし、非常に強かった」と松山。京王杯2歳SやNHKマイルCで勝利を引き寄せた必勝パターンに、スタートから1ハロン過ぎで巧みに持ち込んだ。あとは直線で突き抜けるだけ。完璧なエスコートは史上7人目のJRA全10場重賞制覇も運んできた。
秋の大目標にする、1着賞金約5億円の豪ゴールデンイーグル(11月1日、ランドウィック競馬場・芝1500メートル)を見据えた前哨戦で、約1年ぶりの6ハロン戦。調整のさじ加減も難しいなか、松山には強い思いがあった。「G1馬として恥ずかしい競馬はできないし、負けられない」。強い責任感を乗せた走りは、橋口調教師が「(今までで)一番強い内容じゃないですかね」と振り返るほどの会心の勝利につながった。
今後は26日に栗東へ戻り、豪州へ出発する準備を整えていく。「いい前哨戦になったかなと思います」と松山。北の大地に最高のパフォーマンスを刻み込み、伸び盛りの高い資質はもうすぐ世界の大舞台へ打って出る。(山本 武志)
◆パンジャタワー 父タワーオブロンドン、母クラークスデール(父ヴィクトワールピサ)。栗東・橋口慎介厩舎所属の牡3歳。北海道新ひだか町・チャンピオンズファームの生産。通算成績は6戦4勝。