日本陸上競技連盟は2日、東京世界陸上(9月13~21日、東京・国立競技場)の日本代表80人を発表した。男女混合1600メートルリレーに今大会日本人最年少16歳の清水空跳(そらと)=星稜高=がエントリーされ、男子400メートルリレーメンバーの候補として選ばれた。

大会に出場すれば、16歳172日で15年北京大会に出場したサニブラウン・ハキームに次ぐ日本歴代2位の年少記録。7月の全国高校総体(広島)で、10秒00(追い風1・7メートル)をマークした注目の超新星が“リレー侍”として日本勢初の10代メダリストの夢へと突っ走る。

 16歳が“リレー侍”メンバー候補に加わった。清水は、日本選手団の最年少として初の世界大会代表入り。会見に出席した日本陸連の山崎一彦強化委員長(54)は「高校生ながらに10秒00で走りました。我々としては未知数をどれだけ引き出せるか。その未知数にかなり期待しています」と言葉に力を込めた。

 お家芸復活へ向けた異例の選出だった。男子400メートルリレーは五輪は08年北京大会、16年リオ大会で銀。世界陸上は17年ロンドン大会、19年ドーハ大会で銅メダルを獲得も、その後は表彰台から遠ざかる。山崎強化委員長は「最終日のリレーでメダルが取りたい。総力戦でメダルを取るために(オーダーの)選択肢を増やす判断をした」と手厚く選考した背景を明かした。

100、200メートルの個人代表に加え、400メートルリレー、混合1600メートルリレーの清水と柳田の総勢11人が候補だ。今後はリレー合宿や国立競技場での練習も予定しており「数パターン(オーダーの)構想はある。試しながらやっていきたい」と各選手の状態を見極めながらベストオーダーを組む。

 清水は7月の全国高校総体でU18世界新記録となる10秒00をマークし、一気に注目を浴びた。海外メディアでも「奇跡のスプリンター」などと報道され、国内外で大きな話題に。164センチと小柄ながら長い手足を生かした大きな歩幅、上半身と下半身を連動させた滑らかな走りで大記録を打ち立てた逸材。全国高校総体前まで世界陸上は「遠い存在」で「チケットを買おうか迷っていた」ほどだったが爆発力や可能性を買われ、堂々の初代表入りを果たした。

 バトンパスなどの負担が少ない1走起用が有力だ。8月に「トップで渡したいという気持ちがあります」と自らも1走希望であることを明かしていた。「スタートには自信があります。コーナーも自分は得意なので、爆速なスタートがしたい」。決勝を走り、表彰台に上れば、19年大会400メートルリレー銅メダルのサニブラウンの20歳を更新して日本勢最年少で、初の10代&高校生メダリストだ。

将来の目標を「9秒台スプリンターで五輪に出場すること」と語る16歳が自国開催大会を最高の結末へと導き、大観衆を沸かせる。(手島 莉子)

 ◆清水 空跳(しみず・そらと)2009年2月8日、石川・金沢市生まれ。16歳。両親、姉が陸上をしていたことがきっかけで小学4年生から始める。石川長田中3年時に全日本中学校選手権200メートル優勝。24年に星稜高に進学し、同7月にサニブラウン・ハキームの100メートル高1歴代最高記録を更新する10秒26をマーク。今年7月の全国高校総体は100メートルと200メートルで2冠。100メートルはU18世界記録の10秒00を出し、桐生祥秀の高校記録を塗り替えた。164センチ、56キロ。

 ◇世界陸上の日本勢最年少メダリスト 1999年セビリア大会で女子マラソンの市橋有里が21歳で銀メダルを獲得。19年ドーハ大会ではサニブラウン・ハキームが400メートルリレーの4走として20歳で銅メダルを獲得した。16歳の清水が表彰台となれば日本勢初の10代メダリスト。

 ◇男子400メートルリレー 100メートルの代表を始め出走候補は11人。柳田と清水は混合1600メートルリレーでの代表入りだが、世界陸連(WA)の規定ではエントリーしていれば400メートルリレーにも出場可能。山崎強化委員長はメダルを見据え「400メートルリレー代表を手厚くした」と説明した。予選は20日の午後8時25分、決勝が21日の午後9時20分に大会最終種目として行われ、メンバー確定は出走の数時間前に発表される。

 ◇高校生の世界大会代表 五輪では1984年ロサンゼルス大会の男子100メートル、200メートル、1600メートルリレーに出場した不破弘樹、2012年ロンドン大会の女子400メートルリレー・土井杏南ら。世界陸上では13年モスクワ大会の男子100メートル、400メートルリレーの桐生祥秀、15年北京大会の男子200メートルに出場したサニブラウン・ハキームら。今大会には、東大阪大敬愛高3年の久保凛が女子800メートルで、星稜高2年の清水が400メートルリレーメンバーとして代表入りした。

 ◇リレー侍のライバル 前回23年のブダペスト世界陸上で優勝した米国は、昨年のパリ五輪ではバトンミスでまさかの失格。同五輪100メートル覇者のノア・ライルズを中心としたメンバーで大会2連覇を狙う。同五輪で金メダル、5月の世界リレーで3位に入ったカナダも勢いがあり、21年東京五輪200メートル金のアンドレ・ドグラスが引っ張る。23年世界陸上2位のイタリア、3位のジャマイカも一発を秘める。

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