講談師の神田伯山と歌舞伎俳優の中村獅童が8日、都内でNHK総合「神田伯山の演芸図鑑」(10月26日、11月2日、前5時20分)スタジオ取材会を行った。

 2011年にスタートした演芸バラエティー番組「演芸図鑑」。

今回は伯山が講談師としては初、最年少のナビゲーターとして番組を放送する。スペシャルゲストには伯山たっての希望で獅童を迎えることとなった。

 それぞれの芸の道をまい進しながら、プロレス好きという共通点もある二人の対談は初対面ながら終わりが見えないほど盛り上がった。収録後、獅童は「今日は素の感じで自然な気持ちでしゃべれました。でも放送が30分しかないでしょ?やっぱ特番にしないと無理だと思うよ」とまだまだ話したりない様子。

 一方の伯山は「こないだ尾上右近さんと会ってお話ししたら『伯山さんと獅童さんはあわないと思うよ』って言われた」と明かした。獅童は「右近くんはある意味当たってるかも。酒の席だったら(伯山を)好きすぎて一方的に僕が話しちゃって、帰したくなくなっちゃう」とぞっこん。伯山は「今日ほど酒がなくてよかったという日はない」と笑いつつも「演芸図鑑史上最高の回になった」と手応えは十分だった。

 対談では公開中の歌舞伎を描いた映画「国宝」にも話が及び、「あれは獅童さんは『俺の映画だ』と言ってました」と伯山。父親が早くに廃業し、歌舞伎界から離れた中で歌舞伎役者となった獅童の生い立ちに触れ、「獅童さんがスターになるまでの過程で、どれだけご苦労されたかっていうのを(収録で)話してくださったから、それをちゃんとこの朝の番組で伝えられたらと思う」というと、獅童が「いいこというね。そこは絶対に放送してほしい」と合いの手。

「世の中の人は獅童は何も苦労しないで、順風満帆に今日まで来てるってみんなそう思ってるんだけど、地獄のような日々だったんだから」としみじみ振り返った。

 伝統芸能の世界に生きる二人。獅童は「いろんなことにジレンマを抱えながら生きているけど、いつもそこを突破したいって思っている。その歌舞伎者の精神、パンクの精神、その時代を切り開いていく精神を伯山さんの講談からもすごく感じた」と伯山との共通点を改めて語り、「いつもせめぎ合いやプレッシャーはあるけど、歌舞伎を今に生きる演劇としてやっていきたい。伝統を守りつつ革新を追求するっていうのを目標に役者人生を歩んで行けたらと思っている」と自身の目標に触れた。

 そして、伯山も「獅童さんは映画とかバラエティーとかでも大活躍されてますけど、やっぱりこの方は歌舞伎というもとで評価されるのが一番嬉しいし、好きなんだなっていうのが、僕は獅童さんと今日お話して改めて分かった。だから僕は(獅童が)好きなんだなって気づきました」と獅童への思いを語り、相思相愛。

 獅童との共通の思いを前提に「先人へのとんでもないリスペクトと同様に負けてたまるかっていう精神を持つことが大事」と芸への思いを込め、「どんな講釈師も歌舞伎役者もみんな亡くなってるんですよ。だから、獅童さんも言ってましたけど、生きていることって最強だと思う」と言葉に力を込めた。

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