大相撲秋場所11日目(24日・両国国技館)

 元大関の東前頭11枚目・正代が、新小結・安青錦を寄り倒して2敗を守った。低い体勢の攻めが持ち味の12歳下の新三役を起こし、力強い相撲で相手の連勝を6で止めた。

関脇・若隆景は東前頭5枚目・琴勝峰に敗れて6敗目を喫し、今場所での2ケタ勝利はならず。大関昇進は絶望的となった。全勝の横綱・豊昇龍を1敗の同・大の里、2敗の正代、隆の勝の平幕勢が追う。西十両3枚目の錦富士が9勝目を挙げ、来場所での幕内復帰が有力となり、1883年から142年続く青森県出身の幕内力士の座は死守される見通しとなった。

 力と技のこもった相撲だった。正代は低い体勢で当たってきた安青錦の右ののど輪を少し左に開いた。懐に入らせず、右を差し込んでかいなを返すと、左をおっつけた。「右が入って自分の形にできた」。体を起こして前に出ると、体重をかけて2人で倒れ込み、寄り倒した。八角理事長(元横綱・北勝海)を「技能相撲。かいなを返した後にいっぺんに出た」とうならせた。

 元大関は2敗で全勝の豊昇龍を追いかける。

20年秋場所以来、2度目の賜杯を手にすれば照ノ富士と並ぶ30場所ぶりで史上2番目のブランクVとなる。優勝争いについては「まだ全然意識してない。連敗しないのが一番。星を伸ばすことだけを考えている」と自然体を強調する。

 33歳で自らを「おじさん」と称する。史上最速の所要12場所で新三役となった21歳の安青錦は12歳年下だ。新小結との年齢差を問われて「世代交代じゃないか」と自虐的に言いながらも、元大関として壁になった。6日目に20歳の藤ノ川に勝った際には「負けたくない。おじさんの意地」と危機感を口にしていた。終盤戦の疲れは「おじさんだからある。でも、玉鷲関もいるので負けない」と40歳の奮闘から刺激を受けている。

 6月には、プロ野球パ・リーグ6球団とのコラボ企画で、熊本県出身の正代は、みずほペイペイドームでのソフトバンク―DeNA戦で始球式に臨み、見事なノーバウンド投球。

首位でリーグ優勝目前のソフトバンクについては「マジックがついたところまでは知っている」とうなずいた。白星街道を突っ走り、自身も賜杯への“マジック”を点灯させる。(山田 豊)

 ◆20年秋場所VTR 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、1日の観客数の上限2500人で開催。正代は4日目、7日目に黒星となったが、序盤から順調に白星を重ね、14日目を終えて単独トップ。千秋楽では3敗で当時新入幕の翔猿を退け、初優勝を果たした。大関昇進目安の「三役で直近3場所33勝」に1勝届かなかったが、13勝2敗の好成績を受け、場所後に大関昇進を果たした。

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