◇大相撲秋場所13日目(26日、両国国技館)
8場所ぶりに幕内に復帰した東前頭16枚目・友風(中村)が、同14枚目・佐田の海(境川)をはたき込みで破り8勝5敗。2019年の名古屋場所以来、6年ぶりの幕内での勝ち越しを決めた。
風呂上がりの西支度部屋。多くの報道陣に囲まれ「うれしいですね。味わったことのない感情ですね。(勝ち越しは)名古屋で11勝した時、以来ですか、あの時よりうれしいですね」と言葉を絞り出した。
6年間には様々な感情が交錯した。名古屋で初金星と殊勲賞を獲得した2場所後の九州で右膝の大けがを負った。4度の再建手術を受け、医者からは「切断寸前のケガです。もう相撲を取るのは無理」とも告げられた。その後は身体障害者手帳を鞄(かばん)に忍ばせながら必死のリハビリを続け、7場所連続休場後の21年の春場所で序二段から復帰した。
「地獄の苦しみもありました、今の自分の姿など想像もできませんでした。心も折れたことも何度かあります」。22年の秋場所では東幕下2枚目で2勝5敗と負け越した後、師匠の中村親方(元関脇・嘉風)に涙ながらに「引退したい」と申し出た。
残り2番については中村親方の明確な教えが体に染みこんでいる。「力士にとって大事なのは勝ち越した後、また負け越した後にどんな相撲を取るかなんです。気を抜かないで行きますよ。この体でもできるんだということを見てもらいたい」と気合を入れ直していた。