◆JERA セ・リーグ 巨人4―2中日(30日・東京ドーム)

 巨人・小林誠司捕手が、田中将大投手を日米通算200勝へと導いた。1軍では初コンビとなった2人だが、ファームでは息が合ったところを見せていた。

試合後、阿部慎之助監督は「マー君からも小林を指名してきました」と本人の希望もあったことを明かした。

 小林は田中将の、現時点での良さを引き出そうと、全盛時の右腕とはかけ離れた配球で引っ張った。

 6回85球を投げて4安打4奪三振で2失点。1点リードのまま7回から中川皓太にバトンを渡した。その全85球の内訳を見ると、スライダーとカットボールの曲がり球が全体の約60%を占めた。その中で、左打者には外角のボールからストライクぎりぎりに入れてくる通称「バックドア」も使い、内角に食い込むカットも利用して目線を散らした。右打者には、体に当たりそうなインコースからストライクへと滑る「フロントドア」も採用。もちろん、外へ逃げるスライダーも有効的だった。

 3点リードの3回、細川成也に2ランを浴びたのは、外角高めの直球。浮いた失投を仕留められたが、相手の狙いも小林には見えた。次の4回は全14球中ストレートは1球のみ。曲がり球とスプリットも6イニングの中で一番多く配球し、中日ベンチに的を絞らせなかった。

一発のある4番・ボスラーにも注意を払い、カーブ、スプリットのタテ変化で目線を変え、長打は封じた。

 2013年に開幕24連勝した時のような迫力あるストレートは影を潜めたが、本人も当時を追い求めてはいないだろう。この日の直球は全体のわずか22%。ツーシームも織り交ぜながら、相手の目線を交わしていくベテランらしいピッチングに切り替わった。それを生かすも殺すも、女房役の配球一つで大きく変わってくる。今季は、甲斐拓也と岸田行倫が田中将とバッテリーを組んできたが、小林は2人を参考にしつつ、ファームで組んだ経験を基に、勝つために配球した。構えたミット通りに制球されなくても、その軌道から相手の次を読む捕手力は球界随一だろう。

 巨人には岸田に甲斐、大城に小林もいる。しかし、田中将をイメチェンさせ、通算200勝に導いた頭脳を使わないのはもったいない気がする。CSファーストステージで対戦するDeNAは強力打線が特徴だ。岸田の攻守における存在感に、小林の頭脳。阿部監督も迷うところだろう。

(報知プロ野球チャンネル・水井 基博)

 

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