◆第172回天皇賞・秋・G1(11月2日、東京競馬場・芝2000メートル、良)

 第172回天皇賞・秋は2日、東京競馬場で行われ、日本ダービー2着から直行で臨んだ1番人気のマスカレードボールがG1初制覇。史上6頭目の3歳馬Vを果たした。

クリストフ・ルメール騎手(46)=栗東・フリー=は秋華賞(エンブロイダリー)、菊花賞(エネルジコ)に続く3週連続のG1勝利。2着には同じく3歳の皐月賞馬ミュージアムマイルが入った。

 手綱から伝わってくる力強さに胸が高鳴った。マスカレードボールが残り200メートル付近でギアを上げると、前の2頭を楽にパス。あとはそのままゴールするだけだった。ウィニングランで何度もガッツポーズをつくったルメールは「すごかったです。イクイノックスとちょっと同じフィーリングでした。彼も若い時はエンジンがかかるのにちょっと時間がかかったけど、フルパワーの時はすごくいい脚」。同じくダービー2着から直行で古馬を撃破し世界ランク1位まで上りつめた名馬の記憶を思い起こして大喜びした。

 無双状態の名手に迷いはなかった。ゲートを五分に出て中団の位置を取りに行くと、2番人気のタスティエーラをマークしてそつのないレース運び。初コンビでも息の合った走りで勝利に導いた。

鞍上は「ダービーの時は(直線で)じわじわでしたけど、2000メートルでいい瞬発力がありました」と切れ味を絶賛。秋華賞から3週連続G1制覇を飾り、この土日は計10勝の大暴れだった。

 馬場入りを嫌がるなど気難しさが課題だったが、3歳秋を迎えて成長した。「小学生から中学、高校生になったくらいで、まだ成人にはなっていないが、春と比べて扱いやすくなっているのが最後の伸び脚につながっている」と手塚久調教師。なるべくストレスを与えず気分良く調教できるように、試行錯誤してきた成果も実を結んだ。

 今後について社台サラブレッドクラブの吉田照哉代表が「次は無事ならジャパンC(30日、東京)へ行きたいと思っています」と言えば、トレーナーも「想像できないくらい強くなる可能性があるのかな」と期待を膨らませた。偉大な父ドゥラメンテのラストクロップが、新たな伝説を築き上げていく。(坂本 達洋)

 ◆マスカレードボール 父ドゥラメンテ、母マスクオフ(父ディープインパクト)。美浦・手塚貴久厩舎所属の牡3歳。北海道千歳市・社台ファームの生産。通算7戦4勝。総獲得賞金は5億5061万円。

主な勝ち鞍は25年共同通信杯。馬主は(有)社台レースホース。

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