今年のジャパンカップ・G1(11月30日、東京競馬場・芝2400メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・11年勝ち馬のブエナビスタ(岩田康騎手が騎乗)を振り返る。

 2番人気のブエナビスタが、天皇賞馬のトーセンジョーダンとの叩き合いを制してG1・6勝目をマーク。1位入線しながら2着降着となった10年の雪辱を果たした。直線残り400メートル。ブエナビスタの岩田康誠騎手は、抜け出すための進路を瞬時に切り替えた。3番手から勢い良く伸びるトーセンジョーダンのインが開かないとみるや、狙いを外へ。トゥザグローリーとの間のわずかなスペースをこじ開けた。岩田康の激しいアクションが、ブエナの走りと同化する。トーセンに馬体を併せ、最後はグイッと首だけ前に出た。

 あの屈辱は勝利でしか晴らせない。10年のジャパンCの降着(1位入線)から6連敗。全盛期は過ぎたという声も聞こえただけに、松田博資調教師(当時。16年に引退)は万感の表情だ。

「昨年は、(騎乗した)スミヨンに悪いことをした。それだけに今年は、勝てて本当に良かった」。そう言うと、激しく嗚咽(おえつ)した。

 「ハイペースのなか、あれだけ頑張った天皇賞・秋(4着)を見て、日本馬には負けない自信があった。レースは常にジョッキーに任せているから、安心して見ている。状態さえ戻れば、ブエナが一番強い。そう信じていた」。人馬の信頼でつかんだ勝利に、いつもの笑顔が戻った。

 ブエナビスタは次走の有馬記念(7着)を最後に引退し、繁殖牝馬になった。

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