◆第70回有馬記念・G1(12月28日、中山・芝2500メートル)

 大舞台に挑む人々の特別な取り組みや思いを取材する「G1挑戦 聞き馬した」で、有馬記念に出走が確定したジャスティンパレスを手がける池水健児助手(42)=栗東・杉山晴厩舎=を取り上げる。ラストランに臨む現在の心境を聞いた。

 ラストランが近づいてきた。21年9月にデビューし、23年に天皇賞・春を制したジャスティンパレスは、今回の有馬記念を最後に引退する。デビューから担当する池水助手は「名残惜しさは半々。大人になるにつれてしっかりしてきました。よく成長してくれたと思います」と柔和な笑みを浮かべる。

 かつて20年に無敗の牝馬3冠を達成したデアリングタクトを担当。日高町の長谷川牧場で生まれ、秋華賞の後は勝てなかったが、ファンに愛されターフを去った。「普段の様子と比べて悪いところがないか毎日、見てきた」と同じようにパートナーと向き合い、レースに臨んできた。

 入厩当初は「2歳馬らしく、心も体も幼かった」と振り返るが、バランスのいいきれいなフォームは当時から目立っていた。デビュー2連勝で挑んだ21年のホープフルSで2着。「素質だけでどこまで走れるのかなと思いました」。22年の神戸新聞杯で重賞初制覇を飾り、菊花賞では3着。

センスの高い走りで早くから頭角を現した。

 才能に体が追いついてきたのが、23年の阪神大賞典。前走時から16キロ増の472キロと筋肉がつき、「体が成長して、体重も増えていました。あそこが一番成長したのかな」とさらなる飛躍のきっかけをつかんだ。続く天皇賞・春でG1初勝利。「この馬にとっても、初めてG1を勝てて良かった」と回顧する。

 JRA・G1には今回で10戦連続の出走。84年のグレード制導入以降ではオグリキャップ、グランアレグリアを超え、史上最多となる。有馬は4年連続の参戦。タフに好走を続ける姿がファンの胸を打ち、今年はファン投票で6位の37万1556票を集めた。

 まずは無事にゴールに入ることを願う。「最後も元気な姿で戻ってきてほしい。

勝利という形で終わることができれば、それが一番うれしいですね」。有終の美へ、万感の思いで送り出す。(山本 理貴)

 ◆池水 健児(いけみず・けんじ)1983年9月6日、愛知県生まれ。42歳。名城大で馬術に打ち込み、馬の仕事を志す。大学卒業後は北海道浦河町・三嶋牧場などで勤務。JRA競馬学校を卒業後、12年から栗東・梅内忍厩舎に所属。栗東・日吉正和厩舎を経て、同厩舎の解散に伴い16年3月から新規開業した栗東・杉山晴紀厩舎へ。

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