世界の強豪に立ち向かった姿に心が震えた。ベラジオオペラ(牡5歳、栗東・上村洋行厩舎、父ロードカナロア)のラストランとなった香港C。

林田祥来オーナーに誘われていたが、出張できず現地観戦はかなわず…。

 だが、同馬は香港中距離界の王者・ロマンチックウォリアーを徹底マークし、真っ向勝負を挑んだ。2着で海外G1初制覇、国内外G1・3勝目は逃したが、その実力を海外でも十分に示した。

 香港遠征は個人的には意外でもあった。昨年の大阪杯と今年の宝塚記念。2度、オーナーインタビューを紙面掲載させてもらった。そのなかで、伝わって来たのは有馬記念への情熱だった。まだ馬主になる以前。奇跡の復活劇だった1990年のオグリキャップや、93年トウカイテイオーが勝利した有馬記念。画面越しに伝わって来たファンの熱狂に感動したという。

 「有馬記念が一番、勝ちたいレース。有馬記念を勝つことが夢」とも話していただけに、昨年4着に終わったリベンジに挑むものだと思っていた。

だが、暑さに弱いオペラの体質を考慮し天皇賞・秋をパス。2000メートルの大阪杯を連覇した同馬が、最もパフォーマンスを発揮できる香港C一本に絞ったのだった。オーナーの夢は、オペラの子供たちに引き継がれた。そうTBSドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」のように―。

 その産駒は、距離の融通が利きそうだ。オペラ自身も有馬記念4着、宝塚記念2着があるが、血統構成を見ると、3代母のエアデジャヴーはクイーンSで重賞を制覇し、牝馬3冠で〈3〉〈2〉〈3〉着。その半弟のエアシャカールも日本ダービーこそ2着に終わったが、皐月賞菊花賞の2冠に輝いている名牝系。日本競馬を支えて来たノーザンテースト、サンデーサイレンス、キングカメハメハと大種牡馬が名を連ねる。父ロードカナロアは名スプリンター&マイラーだったが、産駒にはアーモンドアイを筆頭にサートゥルナーリアなど中長距離界の大物も出ているのも頼もしい。

 記者が現地取材に訪れた10月のノーザンファームミックスセールでは、“花嫁候補”の繁殖牝馬を数頭購入するなど、オペラの種牡馬入りに向け、林田オーナーも着々と準備も進めていた。北海道安平町・社台スタリオンステーションで種牡馬入りする予定のオペラ。産駒が活躍し、いつの日か有馬記念を制覇することを願っている。

(中央競馬担当・戸田 和彦)

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