色鮮やかな天平文化を現代に伝える「第78回正倉院展」(主催・奈良国立博物館、特別協力・読売新聞社)は10月24日から11月9日まで奈良国立博物館(奈良市)で開催される。14日は同館で報道発表が行われ、同館の学芸部文化財課美術工芸室・三本周作主任研究員が“見どころ”を解説した。

 今年は北倉13件、中倉22件、南倉22件、聖語蔵3件の計60件が出陳され、うち11件は初出陳。目玉は聖武天皇のご遺愛品と考えられる漆の取っ手つきペルシア風水差し「漆胡瓶(しっこへい)」や、一点のヒビもくもりもない透明なガラスの水差し「白瑠璃瓶(しろるりのへい)」など。さらにニホンテンのミイラ「虹龍(こうりゅう)」も注目を浴びそうだ。

 この「虹龍」は室町時代の1429年(永享元年)に将軍・足利義教が蘭奢待(らんじゃたい)を切り取った際に「竜日干(りゅうのひぼし)」を見たとの記録が残っており、これが記録上の初見。かつては「竜のミイラ」とされていた。この竜がいるために正倉院の扉を開く時には雨が降るという伝説がある。2021~23年の調査で、イタチ科のニホンテンがミイラ化したもので、平安時代末期(11世紀中頃~12世紀中頃)のものと判明。つまり今回が「ニホンテンのミイラ」として初めての出陳となる。

 雨の伝説は現代にも“継承”されている。三本氏は「私が奈良博(奈良国立博物館)に入る前の話ですが、虹龍が(前回)出陳された2008年、宝庫から奈良博に運ぶときに雨が降ったと先輩から聞いております。正倉院展で雨が降りますと、宝庫が開けづらくなりますので、“虹龍さん”にお祈りして、雨が降らないようにして作業に臨みたい」と話し、報道陣からどよめきが起きた。

 さらに三本氏は「珍奇な竜のミイラとして持ち込まれたのか、宝庫に侵入したニホンテンが出られなくなってミイラ化したのか、謎に満ちており、非常に興味深い」と説明。

「ニホンテンが侵入したとしたら、あのかわいらしい動物が(奈良の)この辺にいたということですが、今はこの辺にはいないので(当時も)ああいう動物がいたのかは疑問。何か珍しいミイラと言うことで奉納されたのではないかというのが、私の個人的な想像です」と平安時代に思いをはせた。

 かように虹龍は「珍奇な宝物」なのか「かわいそうな行き倒れの小動物」なのか。あなたの目で確かめてもらいたい。

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